忘暮楼の勤務する私立高校の情報ビジネス科(商業科)3年生の作った詩です。
C:が満杯になったのでファイルの掃除をしていたら出てきました。だいぶ前の卒業生のものです。

「自分を、なにかの自然物に置き換えて語ってみよう」と呼びかけてできた詩です。

 久しぶりにこれらの作品に再会して、この子たちの感性のすばらしさに涙ぐむほど感動しました。


精神の群像
「火の精神」 鈴木智紀

火は恐ろしい
自分を大きくするために
周りにあるものを
灰にする

そしてケラケラ笑う


「海の精神」 山辺陵太

この広い大きな海には
大きな海であるからこそ
隠し切れないことがある

逆巻く波は海の悲鳴かも知れない
自分を探しているのかもしれない


「空の精神」  渡部康二

空はとても広大で澄んでいるが
実はとても思い迷っている
空は恥ずかしがりやで
だれにも見られたくなくて澄んでいるのだ

それでも空は
いつもだれかに見られていて
心を見透かされているようで
こわくおびえている

そのせいで
空は青いのだ

空は何かにすがりつきたいのに
すがりつくものさえない
大地はそんな空をささえている


「雑草の精神」  山内圭

雑草が
嫌われながら
力強く伸び育っていく

黙りこくって
石のように
ほかの草に反発するように
根性をもって
伸び育っていく

我にその精神を満たせよ


「台風の精神」  白石将二郎

台風がおさまりはじめた
怒りが治まったのか
寿命が近付いたのか
だが消えはしない
不満をぶつけている
最後までやってくれる
いなくなる
しかし消えてはいない

地球の陰に隠れて
機をうかがっている


「火の精神」  岩市隆

火は近寄るものをつつみこみ
いきおいよく燃やしてしまう
それだのに時々孤独になる

なぜ孤独なのだろうと考えてみる
しかしわからない
わからぬままやがて
消える


「樹の精神」 三好隆久

樹はたくさんの人間をみつめてきた
喜んでいる人間 泣いている人間 
怒っている人間 
樹は人間のように
喜んでみたい 泣いてみたい
怒ってみたいのだ
しかし樹は自分の姿を見たことがない
だから樹はときどき
自分を知ってみたいと思う


「風の精神」  井手内剛

風はいま止んでいるのではないか
風は止んではいけないだろうに

風は 木々の間を走り抜き
そして
草原または水面を走ればよいのだ
だが風は一気には走り始めない

風は走れるところまで走ればよいのだ
風は自由になってこそ見えるのだから


「土の精神」  吉岡秀

土は踏まれることで強くなる
踏まれれば踏まれるほど強くなる

土は役目が一つしかない
踏まれてやることだ

ただそれしかできない
そしてその役目を終える日もない

あるとすれば
すべての踏むものが
土に帰化するときであろう


「影の精神」  西原潤

存在感のある影はない
影は自分で現れることはできない
だが ふと気付くと影になっていた


「雲の精神」 西山友祥

この果てしない空の中に
雲が生きている
自由に
だれの目も気にせず
気楽に生きている
そしてあの堂々たる態度だ
僕は雲になりたい
そして風に吹かれ
新しい形を作りたい


「僕の精神」 石丸正蔵

世の中、金だけ
というもの
本当にそうなのか
身も心も冷えきった
きびしい世の中を
のりこられる安らぎとは
一体なんなのだろう

自分の手でみつけるまでは
答えは知りたくないものだ

そこに死があっても
絶望があっても
答えは知りたくないものだ
自分の手でみつけるまでは


「雪の精神」 河野大輔

雪が降ってくる
白く降ってくる
解けかけた雪もある
けれども頑張って降ってくる
努力をすればそれだけ積もる
心を真っ白にして降ってくる

降れば降るほどきれいなる


「海の精神」 清岡維斗

海は広い 
どこまでも続く
船を浮かべ 
魚を泳がせ 
あらしをほえさせ
いつも空を見あげている


「鏡の精神」 山崎耕平

部屋の鏡を割ってみたら
あのときの顔が見えるだろうか

あふれる涙
学校も、恋も、友達も、そして人生も
何もかも投げ出したくなった
あのときの顔が


「光の精神」 佐伯孝明

光はいつも
僕の行く道を照らしている

その光は
出発点はもう照らさない
最終点までは届かない


「道の精神」 田中秀治

道は真っすぐなのに
精神は揺れている
道は真っすぐなのに
精神は傾いたままそれていく
どうすればもとの道に戻れるんだ

だれかが必要だ 出会いが必要だ

皮肉なものだ
道は真っすぐなのに
どうして精神は迷うんだ


「雲の精神」  大東真一郎

気まぐれな雲が流れている
気まぐれな雲は空を愛している

若い雲にはどうにもならない心がある
若い雲は自分の姿を知りたがる
なぜここにいるのだろう 雲は思った

若い雲は
次々にどこからか生まれてくるの雲を見た
仲間がいた
雲は、どうなろうが雲は雲だと思った

太陽は明るく雲を照らしていた


「風の精神」 田中宏昌

風よおまえはどこから吹きはじめるのか 
そしてどこで吹きやむのか

子供のころ
おまえのように自由に
世界を回りたい
という夢もあった
今はその夢も風とともに去っていった