向寒の候 兄 幸に壮健なる由 欣賀欣賀 小生等も無事なり 先月上旬朝鮮事変(注1)起こりし以来 東洋の風雲に異状を呈し 露国との開戦も必ず近きにあらん 異境に在りて事を為さんは 将に此機を失ふべからず 我が大日本のために一つの障害物たる王妃は 星亨(注2)氏の書生すでに之れを暗殺せり 小生等 この事変を聞き 手の舞い足の蹈む処を知らず快をと叫びて万歳を三唱せり 是れが為め 露国は目下 大日本の戦闘力微弱なるに乗じ 事を挙げんと脅嚇する処あれども 彼露国何程の事かあらん 小生等 王妃の暗殺せられたるたるを以て満足せず 一州を取るも誅せられ 八州を取るも誅せらる 誅は一つのみ 進んで今一つ害物たる大院君の頭上に日本刀の切れ味を試みずして 止むべけんや 小生等幸いにまだ退韓の命をうけず(注3) 天我等に与ふるに一生の功名を以てせり 時機を図り事を挙げんは此の時なるべしと 窃かに同志の諸士と相謀る処あり 云々(以下省略)
注記