光州学生独立運動

韓国では11月3日は「学生の日」です。この日が植民地時代最大の学生運動「光州学生独立運動」が開始された日だからです。この運動のきっかけは光州の日本人中学生(当時光州にも日本人の通う中学校がありました)が通学列車から降りてきた朝鮮人女学生をからかい侮辱したので女学生のいとこの朝鮮人男子学生が日本人学生を殴りつけたという事件でしたが、その女学生の一人は、治安維持法を向こうまわした秘密の共産主義研究会「少女会」の会員で、しかも愛媛県人である岩城錦子さんでした。

これにはびっくりしましていろいろ調べてみました。とりあえず、光州学生独立運動の経過と、岩城錦子さんが治安維持法違反で懲役一年の刑に処せられた光州地方法院(裁判所)の判決理由を載せておきましょう。


光州学生独立運動の経過

○1928(昭和3)年11月はじめ、女性は男性の圧迫により 無産大衆を資本家階級の圧迫により それぞれ解放せんとして 秘密結社「少女会」 を結成し、毎月一回会合。呼びかけ人張梅性(チャンメソン)。参加者、朴王連、高順礼、張慶礼、岩城錦子(カネコ? 愛媛県人・父は宇和島出身)、南侠侠。

○1929(昭和4)年10月30日、全羅南道の羅州行きの列車で日本人中学生生徒の福田修三らが朝鮮人女子生徒の朴己玉・岩城錦子らをからかい、朴己玉の従兄弟の朴準埰が福田を殴っため、 日本人生徒と朝鮮人生徒の間に乱闘が始まった。警察が朴準埰と朝鮮人生徒だけを逮捕したので、生徒の不満が高まった。

○これが原因となり、1929(昭和4)年11月3日、朝鮮人生徒らは 日本警察や歪曲報道をした光州日報に抗議し、朝鮮人学生と日本人学生の衝突が発生し、警察が朝鮮人学生を検挙した。このことが光州高等学校の高校生を激高させ、 検挙者の釈放を求めるとともに日本による植民地政策を批判して示威運動を展開した。その中250人の朝鮮人が逮捕され、朝鮮人生徒らは同盟休学を結成し、日本に抗議した。

○この運動は朝鮮各地で1930(昭和5)年3月まで続き、149校、5万4千余名が参加した。退学処分を受けた生徒582名、無期停学処分2330名、逮捕された学生1462名であった。

○1930(昭和5)年1月 少女会の会員が治安維持法違反容疑で逮捕された。

○1930(昭和5)年10月6日、光州地方法院は、張梅性(チャンメソン)、朴王連、朴慶男(女性らしい)、高順礼、張慶礼、岩城錦子、南侠侠ら11名に対し治安維持法違反の有罪判決を下した。張梅性は懲役2年、未決拘留日数中60日を刑に算入、その他は懲役1年・執行猶予五年。

○ この運動は朝鮮全域に広まって行き、1926年の6・10万歳運動以降、朝鮮半島で起こった最大の独立運動になった。 学生運動としては殖民時代最大の運動であった。1953年に韓国はこの日を記念するため、11月3日を「学生の日」で決めた。

○併合から9年後・1919年の3.1独立運動、その7年後・1926年の6.10万歳運動、その4年後の11.3学生運動の三つの運動が植民地時代の三大独立運動と呼ばれている。


光州旭女高少女会事件 判決理由

1930(昭和5)年 第45号(光州地方法院)

理由

被告人 趙梅性、朴玉連、朴継男、張慶礼、及南侠侠は 昭和5年3月末頃 
被告人 高順礼 及 岩城錦子は 同年 1月中 
何れも 光州公立女子高等普通学校第3学年を中途退学し

被告人 朴采煕は昭和4年11月末頃 
被告人 朴賢叔は昭和5年1月中
何れも 同校第2学年を中途退学し

被告人 金錦■は昭和4年10月ごろ 同校第2学年在学中 同校より全州公立女子高等普通学校に転校し 昭和5年2月中 同校第2学年を中途退学し(■は女偏に燕) 

被告人 全貴先は 同年1月初旬ごろ 光州女子高等普通学校第2学年在学中 同校より 郡山公立高等女学校に転校し 同月中旬頃同校第2学年を中途退学したる者なる処

(注:岩城錦子は1930(昭和5)年1月に中途退学したとあるが、岩城はこの月治安維持法違反容疑で逮捕されている。これから推定すると その他の生徒も「中途退学」は逮捕による退学と思われる。だとすると、生徒たちの逮捕は 次のようであった可能性ある。

金錦■ 昭和4年10月ごろ
朴采煕 昭和4年11月末頃
高順礼、岩城錦子
朴賢叔、全貴先
昭和5年1月中
趙梅性、朴玉連
、朴継男、張慶礼、南侠侠
昭和5年3月末頃

被告人 張梅性は 共産主義者なる張載性の実妹にして その感化を受け 予てより共産主義に共鳴し 現時j朝鮮の社会組織に於ては 女性は家庭人として男性の為に 無産大衆として資本階級の為に 朝鮮民族として日本帝国主義の為に 三重の圧迫を被れるを以て 現社会組織を破壊し 私有財産制度を否認する共産制の新社会を創設し 因て以て 朝鮮女性をして 之等圧迫より免れしめむことを熱望し居りしが  

昭和2年11月初旬頃に到るや 右願望達成の為に 自校生徒中同志を糾合し 其の同志と共に結社を組織せむことを企て 其の頃 相被告人 朴玉連・高順礼・張慶礼・岩城錦子・南侠侠を 全羅南道光州邑内公立師範学校裏手高地に呼集めたる上 一同に対し女性を男性の圧迫より 又 無産大衆を資本階級の圧迫より 夫々解放せむとして 私有財産制度を否認する共産制社会を実現せしむることを目的として 秘密結社を組織せむことを諮りたるに 

一同之に賛成し 茲(ここ)に右被告人六名は 即時その場に於て協議の上 右目的をもって少女会なる秘密結社を組織したる上 右被告人などを会員とし 例会として 毎月一回会合して 右目的達成の手段として先づ共産主義の研究を為すべきことを協定し

被告人 朴継男、朴采煕、朴賢叔、金錦■ 及 錦貴先は 相被告人 張梅性の勧誘を受け 同年五月中 張梅性方に開催されたる全貴例会に列席したる上 該少女の前示のごとき目的を持って組織せられたる秘密結社なる上を知りながら 同会設立趣旨に賛同したる上 之に加入したるものなり

証拠を按ずるに 被告人 趙梅性の相被告人 朴玉連・高順礼・張慶礼・岩城錦子・南侠侠と共に 判示の時刻 判示の場所に於て 判示の目的を持って 少女会なる秘密結社を組織したる事実は 検事の被告人・張梅性に対する証人尋問調書に 之と同旨の供述記載あるに依りて之を認め 

同被告人の右結社組織の 判示の如き動機に出でたることは 司法警察官の 同被告人に対する尋問調書にその旨の供述記載あるに依りて之を認め

其の余の被告人等の判示犯罪事実は 予審判事の同被告人等に対する各第1回尋問調書に 夫々判事事実中の各自に関する部分を同旨の供述記載あるに依りて之を認む

法律に照らすに 被告人十一名の判示所為は 何れも治安維持法第一条第三項に該当するを以て 被告人等全部に対し 何れも 其の所定刑中 懲役刑を選択したる上

其の所定刑期範囲内に於て 被告人 張梅性を懲役2年に 被告人 朴玉連・朴継男・高順礼・張慶礼・岩城錦子・南侠侠・朴采煕、朴賢叔、金錦■、錦貴先を各懲役1年に処すべく 

被告人 趙梅性に対しては 刑法第21条に依り 未決拘留日数中 60日を右本刑に算入すべく 

爾余の被告人等に対しては 何れも慶の執行を猶予すべき情状ありと認め 同法第25により 何れも5年間右刑の執行を猶予すべきものとす

仍て主文の如く判決す

昭和5年10月6日
 光州地方法院刑事部
     裁判長及裁判官2名の署名