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  1999年10月14日(金曜日) 曇り 気分よし
子どもをうそつきにする方法

 たまにすごいウソツキの生徒に会うことがある。
 もっともらしい話なのでそれを信じる。しかし、そのうちあちこちで齟齬をきたすことになる。

 調べてみると、それがまったくのでまかせだったことが簡単に判明する。何回ばれてもこれを繰り返す。

 家庭の事情をみてみると、父親が厳しい。口うるさい。そして母親が全く同じタイプである。子どもが両親にはさまれて厳しく査問されている。子どもは、右からも左からも機関銃の掃射を受ける。「ごめんなさい」、「もう、しません」、「ーーーーします」、と謝罪しない限り掃射は続く。

 それで子どもはうそをつく。うそをつくことで解決することを学習する。こうして、あきれるほどのウソをつく子どもが生まれる。 

 その場を切りぬけるための道具としてコトバがあるわけだ。コトバのshutdown機能とでもいおうか。

 兵庫の山田悦子さんが大阪高検の上告権放棄による無罪確定によって25年の戦いを終えた。甲山(カブトヤマ)事件の終結である。

 山田さん(48歳)は朝日新聞紙上で、取調べの過程で、なぜ「自分がやった」とウソの自白をしたのか、という質問に答えている。


1 普通の人にとって逮捕されること自体が衝撃。私の場合は腰が抜けた。

2 警察でまず素っ裸になって身体検査された。人間としてのプライドは剥奪され、精神をずたずたにされた。(悦子さんは、逆算してみると当時、23歳)

3 取調室で「おまえは極悪非道なおんなだっ」などと怒鳴られ、人格を否定されすっかりめげてしまった。

4 食事も排泄もすべて警察官の監視のもとに置かれ、他人に見られつづけて生活させられると、考える力も麻痺し、取調べに対抗して無実を訴える力を剥ぎ取られる。

5 警察のストーリーに沿った有罪の証拠や同僚の証言だけを示されるうちに、だんだん自信が無くなってくる。何度も思い出そうとしているうちに記憶も浮かばなくなってくる。するとこんどは「やっているから記憶がないんだ」と責められる。

6 父親も疑っているぞ、支援している同僚も本当は疑っているんだぞ、といわれたときは、命の綱が切れたような感じになって、「誰も信じてくれないなら、どうでもいいや」という気持ちになった。

7 過酷な取調べを一つ一つクリアしていると、苦しみを場当たり的に解決することしか考えられなくなります。(こうして「自白」してしまう)


 山田さんの言葉を読みながら、くだんの寂しい習慣をもっていた昔の教え子を思い出したのでしたが、それはそうとして、この山田さんのはなし、生徒たちには是非話してやりたいです。してもいないことをしたと「自白」してしまう心の仕組み、こういう人生にかかわる一大事をチャンと教えておくことは教育の大事な仕事です。

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