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  1999年5月4日(火) いい雨だ
緩慢な別れの儀式

倍賞千恵子の「ユキエ」を見た。この映画は、二つのセリフのために作られた。

一つは「Lock me in !」

アメリカ人と結婚した日本人女性。アルツハイマー病が進行して徘徊がひどくなってきて、出勤する夫に、とうとう 「Lock me in,please.」と頼むのである。自分の家を、外出禁止のnursing homeと認めるのである。

もう一つのセリフは「slow goodbye

「緩慢な別れの儀式」と訳したい。女性は息子たちに、自分の病気は、あなたたちへの slow goodbye なのよ、と語るのであった。
この映画をみてはじめて、忘暮楼と96歳の寝たきりで痴呆の母との関係を理解することができた。生きる価値のないものへのむなしい介護ではなく(忘暮楼はそう思いがちだった)、これは、100年近く生きてきた女性と、その女性の愛を60年近く一身に浴びてきた忘暮楼との「緩慢な別れの儀式」なのだ。毎日毎日が別れの儀式の階梯なのだ。

ひるがえってみると、人々はみなそれぞれの slow goodbye の毎日なのだ、といえるかもしれない。

「Shall we dance?」でダンス教師役をやっていた草村さんが、この映画でも完璧な脇役を演じていた。


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