2003年6月18日 木曜日

沖縄の童名(ワラビナー)

 新聞の訃報欄 を見ていると「天寿をまっとう」して他界された90歳以上の方の名前に「ウトゥ」とか「カニメガ」などという珍しい名前に遭遇することがある。これは「ワラビナー(童名)」といわれる名のようである。沖縄語辞典は「ワラビナー」を次のように説明している。
nanui(貴族・士族の元服の時につける名)に対して、子供の時からの名。わらべ名、幼名。
 nanuiというのは「名乗り」であろう。そうすると、忘暮楼などは生まれたときに「守」という名をつけてもらったのでこれが「ワラビナー」なのか、と考えたくなるがそうではないらしい。「ワラビナー」は札幌琉球芸能事情沖縄タイムスのコラムの説明がわかりやすい。

 これらの説明によれば、八人の京大たちの曽祖父母、祖父母、父母の「ワラビナー」がそれぞれ「ウミトゥク」「カナ」「シューカミ」等々であるとすれば、八人の兄弟姉妹と一男の子供のワラビナー、は自動的に下のように決まるのだそうだ。つまり子孫はある法則で先祖の名前を受け継ぐわけである。場合によっては、赤字のように三代にわたって同じ童名が同居することもある。

曽祖父
=思徳
ウミトゥク
一男の妻
=ウサ
−− 祖父
=小満金
(シュミーカニ)
−− 一男
=思徳
ウミトゥク
曾祖母
=カナ
−− 父(一男)
=思徳
ウミトゥク
ー− 一男
(父方の祖父の童名)
=小満金
(シュミ−カニ)
祖母
=ナビー
−− 二男
(母方の祖父の童名)
=真三良
(マサンダー)
−− −− 三男
(父方の曽祖父の童名)
=思徳
ウミトゥク
−− 四男
(母方の曽祖父の童名)
=樽金
(タルカニ)
曽祖父
=樽金
(タルカニ)
−− 一女
(父方の祖母の童名)
=ナビー
−− 祖父
=真三良
(マサンダー)
−− 二女
(母方の祖母の童名)
=ウシ
曾祖母
=カニメガ
−− 母(一女)
=カニメガ
−− 三女
(父方の曽祖母の童名)
=カナ
祖母
=ウシ
−− 四女
(母方の曾祖母の童名)
=カニメガ
 野原三義先生のお話によると、明治も中期になって「ワラビナー」のほかに「ヤマトゥナー(大和名)」も持つようになったという。「ヤマトゥナー」は親の趣味やひらめきでつける名であるから「ワラビナー」とは本質的に違う。学校に通うようになると一つのクラスに「タルー金城」(…平民は「童名・村名」でなのったのだそうでこのように西洋人のような感じの名乗りになる…)が5人いるというようなことも起きるわけで、子供の学籍管理のために個人ごとに違う「ヤマトゥナー」が必要になったようだ。それで「ヤマトゥナー」は「学校名」ともいったのだそうだ。野原先生は、波照間で、親が「ヤマトゥナー」の作り方が分からなくて、学校の教員が何人分もの「ヤマトゥナー」をまとめて決めた、と言う話を聞かれたことがあるそうだ。

 しかし実際に友達同士で呼び合うときは「ワラビナー」をつかうから、役場に届けた「ヤマトゥナー」を知っているのは親と本人だけということも多かったそうだ。野原先生は「お年寄りにとってはワラビナーこそが本当の名前なのである」とも書いておられる。