2003年4月11日「琉球新報」の連載記事「長寿の島の岐路(55) 第3部・癒やし幻想」に2000年の沖縄の自殺関連統計が引かれていた。著作権の問題もあるようなので、表形式で紹介しておこう。
まず大まかなところでいうと、
沖縄県内の自殺者数 |
347人 |
人口10万人に対する自殺者の割合(自殺率) |
26.5人 |
全国平均自殺率 |
24.1人 |
沖縄の自殺率(多い方から数えて)全国順位 |
10位 |
となっている。
沖縄県内の自殺者数の推移を見ると、
1980年代までの沖縄県内自殺者数 |
平均210人前後 |
1990年代 |
増加に入った(全国的な傾向と軌を一にしている) |
1998年の沖縄県内自殺者数 |
350人に達した(別の資料によると、この年の自殺率は全国的に特異な上昇を見たらしい) |
2000年の沖縄県内自殺者数 |
371人(ピーク) |
1996年〜2000年の過去五年間の自殺者数 |
毎年、300人台 |
男女別では男性自殺者が圧倒的に多い。
男性は女性の2倍 |
沖縄の女性の自殺率 |
沖縄の男性の自殺率 |
2000年 |
(10万人あたり)21人 |
(10万人あたり)42人 |
2000年の沖縄県内男性の自殺率 |
全国ワースト3 |
1990年の男性自殺率 |
4位 |
1995年の男性死亡率 |
2位 |
※参考※ 自殺率第1位の秋田県では、男性の自殺者が女性のそれの2.9倍となっている。
なかんずく、中高年男性の自殺率が高い。
45〜54歳、 |
ワースト1 |
61〜64歳 |
ワースト1 |
30代以上のその他の年代 |
ワースト5以内 |
1999年の秋田県の統計では、
40〜64歳の自殺者 |
自殺者全体の50.4% |
65歳以上の自殺者 |
自殺者全体の27.4% |
という数字が出ていた。似たような傾向なのだろう。
一方女性の方は
同記事によれば、琉球大学医学部の名嘉幸一教授は自殺者増の背景について、
- 急速な近代化や都市化に伴うストレスの強さ、
- 高い失業率、
- 低所得など
をあげているが、一般的に過ぎる分析ではないだろうか。
秋田県の場合は、都市より農村地域に自殺が多いそうである。農業規模の拡大の掛け声にのって作ってしまった借金が返せない。金を貸してくれた農協は、広域化してアカの他人の集団になっているためだろう、遠慮ナシに返済を督促してくる。連帯保証人への督促も事務的にどんどん進められていく。そんななかで追い込まれてしまうケースが多いそうだ。パチンコ・スロット、連帯保証人、借金督促の厳しさなどもっと具体的な事例研究が必要なのではないかと思われる。
名嘉教授はさらに、男女差についても
- 女性は家庭での存在感が大きい
- 女性は地域でも中心になってコミュニティーを支える
など、女性は男性に比べストレスの解消法を多くもっていることが関係しているのではないか、と分析している。しかし、これも近所のスナック街のあかつきまでの繁盛振りや、パチンコ・スロットの隆盛振りを見ると、男性にストレス解消法が少ないとも思えない。もう少し突っ込んだ分析がほしい。
※秋田県の事例は「農民運動全国連合会」の機関紙の記事より引用。