2003年5月28日

沖縄の健康状況の背景
長寿沖縄シンポジュームでの議論 その2

「琉球新報」主催の「長寿沖縄再構築への挑戦」シンポジュームでの議論を通して、 これまで旅人である私の目を驚かせてきた、新聞訃報欄の「病気療養中」のほとんどが癌による死亡であるらしいという一件、沖縄に氾濫する食文化・弁当文化の問題、大学のキャンパスでも街角でもすぐに気がつく沖縄県人の全般的な肥満傾向などが一つ一つ沖縄県人の健康問題にかかわる重要な問題だったことのがわかった。

今回はこのような沖縄の健康状況の背景についての議論である。ここには、
  1. 日本人全体の健康に影響を与えている「広い駐車場をもつ郊外型スーパー」の普及など、全国の傾向と軌を一にする問題
  2. 戦後のアメリカ軍の支配のなかで導入された、いわば安保条約による「沖縄食文化」崩壊
  3. それらの結果としての、沖縄の伝統的「肉食文化」の暴走
  4. 沖縄の「夜社会」文化の影響
    • 民謡酒場の営業時間をみると、那覇市の「宮古根」は20時から翌3時まで、沖縄市の「姫」は21時から翌3時まで、同「なんた浜」は21時から翌4時まで、といった調子だ。
    • 通学途中に見かけた居酒屋は「ファミリー居酒屋」の看板、それでいて営業時間が17時から翌5時までとある。「ファミリー」と「朝5時まで」の取り合わせには驚かされる。
    • 私もこの文化のおかげで毎朝3時頃に起こされる。帰宅する酔客の奇声が響くのである。
  5. 沖縄の「歩かない文化」の影響
    • 「沖縄人は500メートル以上の距離はタクシーに乗る」という話もある。
  6. 事業者の健康関連法規軽視
  7. 医者にかかりたくないという県民意識
    • この県民意識の背景には次のようなものがあるのかもしれない(忘暮楼の推測)
      • 長い労働時間
      • 経済負担
      • ひょっとしたら「医食同源」観念
など、さまざまな側面が見られる。



 (各発言紹介には理解のための補筆が若干あり)

コーディネータ 当山護(沖縄医師会副会長)
  1. 沖縄県民は、健康診断で問題を指摘されてもそのまま放っている人が多く、病院に来たときは症状がかなり進んでいることが多い。
パネラー 尚弘子(琉球大学名誉教授)
  1. 沖縄の「肉食文化」が「飽食の時代」に流されている。
    • 明治期の食生活では、日常食の94%は甘藷(んむ)で、甘藷のつる(かんだばー)や豆腐など具沢山の味噌汁とともによく食していた。
    • 豚肉は盆正月にでる程度だった。
    • ところが現在は、牛やポーク缶など肉の加工品もたくさんあり、それらを毎日のように食している。
  2. アメリカ流のファーストフードの文化が県人の健康を蝕んでいる。
    • 米軍政下において、アメリカ流のファーストフードが本土に先駆けて導入された。
    • この環境が沖縄の食文化を崩壊させた要因だ。
    • しかし、本土復帰後も平均余命日本一が続いたので、県民は沖縄の食文化の崩壊の意味を理解できなかった。
    • 沖縄=長寿というおごりと、健康意識の欠如が今日の結果をまねいたのではないか。

パネラー 柳川行雄(沖縄労働局労働基準部長)
  1. 事業主の順法意識が低い。
    • 50人以上の事業所の定期健康診断実施率は罰則規定があるにもかかわらず、69%。受診率も50%そこそこだ。
    • 50人以上の事業所に設置が義務付けられている産業医の選任も54.5%。
    • 衛生管理者の設置率も54%。
    • 一方労働時間は、全国平均より72時間から100時間ながい。
パネラー 秋田貞行(沖縄県生命保険協会会長)
  1. 2001年の厚生指標で、外来受診率は全国より低いが、入院率は逆に全国より高いという結果が示されている。
    • この傾向は、糖尿病や高血圧、呼吸器疾患などで顕著。
  2. これは、よほど悪くなって受診するせいで、疾病に関する県民意識がうかがえる。
  3. 沖縄は「夜型社会」で「歩かない社会」だ。
    • 夜遅い時間に親子が居酒屋で食事をしたり、買い物をしたりしている。他府県では見られない光景だ。
パネラー 出口宝(健康科学財団理事長)
  1. 沖縄の風土や環境の変化で顕著なのは、
    • 戦後アメリカの食文化が短期間のうちに流入してきたこと。
    • 道路網が整備されて、自動車社会になったこと。
  2. 沖縄での18年の生活のなかで増えてきたものは
    • 整備道路
    • 外食
    • ファーストフード
    • 郊外型スーパー
  3. 駐車場の完備したスーパーが増えると、糖尿病やその予備軍が増加する、とうデータもある。
  4. 便利さの弊害が県民の健康問題に表れている。