2003年5月23日
 ぐぁあ

三線師匠の栄徳先生は阪神ファンだ。今期のタイガースの怒涛の勢いにご満悦である。向こう隣の小料理屋「ろまん」の大将は横浜ファンだ。こちらは負け惜しみが多い。このまえの稽古日の雑談でも栄徳先生はにやにやしながら、横浜が負けが込んでいるダロー、だからヨ、「ろまん」へ行きにくいサー、と言っていた。

 ところが今夜の横浜は巨人相手に大爆発だ。巨人も清原を先頭に驚異的な粘りを見せているのだが、横浜はその上を行っている。今14対8だ。今日あたりは栄徳先生ご夫妻が「ろまん」へやってくるかもしれないなあ。

 と思ってたら電話がかかってきた。案の定、栄徳先生ご夫妻が「ろまん」に来ているのだ。さっそく出かける。といっても三階から階段を降りれば、あとは歩いて三〇歩くらいで到着だ。ご夫妻の席に加わって、これから練習することにしている「夜啼き鳥」をカラオケで歌ってもらったり、一緒に「遊びションガネ節」を歌ったりしたあと、先日の「ぐぁあ」談義の続きとなった。

 稽古中でも反省会中でも、栄徳先生と兄弟子の会話にしょっちゅう出てくるのが「ぐぁあ」である。私はうまく使えないのだが「ビールぐぁあ飲もうと思ったらつまみぐぁあがなくってさあ…」といった調子である。

 先日の「ぐぁあ論議」というのは、三線の稽古のあとの反省会でのこと。栄徳先生が奥さんのことをしきりに「えっちゃんぐぁあがさー…」というので、私もまねをして「えっちゃんぐぁあは…」といってみたら「おのえさん、『えっちゃん』はいいんだけどサー、他人から自分の奥さんの名前に『ぐぁあ』付けられるとムッとするさー。だめだめ」と叱られた。「三線ぐぁあ」と言ってみたら、「三線好きの人に三線ぐぁあっていうと、馬鹿にしていると取られるよ。だめだめ」と来た。後いろいろなものに「ぐぁあ」を付けてみたが「それもだめさー」が多く、結局「おのえさんは『ぐぁあ』は使わない方がいいよ」という結論になってしまった。

 「沖縄語辞典」は「ぐぁあ」を次のように説明している(「ぐぁあ」は「子(っくぁ)」からきた語で、漢字では「小」と書く)。
【接尾辞】
@小さいことを表し、またその愛称となる。「といぐぁあ(小鳥)」、「んまぐぁあ(仔馬)」
Aこどもの名について愛称となる。「たるうぐぁあ(太郎坊)」、「ちるうぐぁあ(鶴子ちゃん)」
B少量であることを表す。「くうてえんぐぁあ(ほんの少し)」「うっぴぐぁあ(それっぽっち)」
C軽蔑の意を表す。「うしゅめえ<御主前>ぐぁあ(じじい)」、「はあめえぐぁあ(ばばあ)」
D分家の意を表す。「西小波津小(西小波津家から分家)」、「金武小(金武家から分家)」
 この説明では「女房を他人から○○グァアと呼ばれるとむっとする」ってところが説明しきれないようだ。「ぐぁあ」には「人間関係設定機能」のようなものがあるとにらんだ。排他的親密性?密室性?…こんなキーワードで「ぐぁあ」を考えてみたい。琉球方言学概論のレポートのテーマはこれで行こう。