2000年 12月28日 木曜日

 【転載】歴史研究者・教育者60氏アピール
   「史実をゆがめる『教科書』に
         歴史教育を委ねることはできない」 その2


 

 

 第二は、近代日本のあいつぐ戦争を正当化しているばかりでなく、「大東亜戦争」はアジア解放のための戦争だったと描いていることです。日本はイタリアやドイツを同盟を結んではいたが、ムッソリーニのファシズム、ヒトラーのナチズムとも違い、人種差別反対を国の方針としていた、「大東亜会議」の際の「大東亜共同宣言」(1943年11月6日)は、1960年の国連総会での植民地独立付与宣言と同じ趣旨のものであった、とまで書いています。

 しかし、大日本帝国が1945年の敗戦を前にしても、なお、「朝鮮ハ之ヲ我方ニ留保スル」との方針をとり、あくまで朝鮮を植民地として維持しようとしていたことは、日本政府が公表している文書からも明らかです。(1945年5月14日、最高戦争指導会議構成員会議「対ソ交渉方針」(我譲渡範囲))。こうした事実を無視して、大日本帝国があたかも「植民地解放の旗手」であったかのように描き出すのは、まさに歴史をゆがめ、「現代の神話」をつくりだすものと言わざるをえません。

 敗戦後の日本の歴史学・歴史教育は、国民を戦争へと導くのに大きな役割を果たした戦前の歴史学・歴史教育のあり方に対する深い反省から出発し、多くの学問的な成果をあげてきました。「つくる会」の「教科書」は、、歴史の真実をゆがめるばかりでなく、こうした歴史学・歴史教育の学問的な達成を真っ向から否定する非科学的なものでもあります。

 私たちはこのような「教科書」を日本政府が公許し、それが採択されて、子どもたちの歴史教育に供されることは、まさに敗戦に至る戦前の独善的な歴史教育の復活に道を開くものだと考えます。同時に、教科書検定基準に「国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」との一項を設けた日本の国際的な約束に背くばかりか、平和と民主主義を希求する世界、とくにアジアの世論に挑戦するものであり、日本を国際的な孤立に落とし入れるきわめて危険なくわだてにほかなりません。

 私たちは、歴史研究者と・歴史教育者としての事故の良心にもとづいて、このような「教科書」が登場することに対する深い憂慮を、広く日本の内外に表明するものです。

呼びかけ人(50音順)
朝尾直弘 甘粕健 網野善彦 荒井信一 
粟屋憲太郎 猪飼隆明 石躍胤央 伊藤康子 
井上勝生 入間田宣夫 岩井忠熊 江口圭一 
笠原十九司 糟谷憲一 門脇禎二 鹿野政直 
木畑洋一 君島和彦 木村茂光 木村礎 
工藤圭一 小沢浩 小谷汪之 小林昌二 
小松裕 佐々木潤之介 砂糖宗淳 鈴木良 
高沢裕一 田港朝昭 堤啓次郎 戸沢充則 
直木孝治郎 中塚明 永原慶二 西川正雄 
橋本哲哉 浜林正夫 林英夫 広川禎秀
藤木久志 古厨忠夫 松尾尊充 松島榮一 
丸山雍成 丸山幸彦 峰岸純夫 宮城公子 
宮田節子 宮地正人 村井章介 安井三吉 
安丸良夫 弓削達 吉田晶 吉田伸之 
吉見義明 渡部則文 和田春樹 脇田晴子