2000年 11月18日 土曜日

 歩読


   職場では車通勤の職員のために学校の敷地内に駐車場が準備してある。大多数の職員はそこを利用しているのだが、数十人がそれぞれの所属する職員室近くに駐車する。係が職員朝礼で同僚に「車は駐車場へ」とアナウンスする。しかし、具合の悪いことに、それまで学内で駐車していた人物が係になることが多いので、そのアナウンスの効き目がない。

 「消防車が入らない」というのがはじめに説明された理由だった。つぎに「誰が学内に置いているか記録している」ときた。このときに忘暮楼は「そんなスパイみたいなことをいうのなら今後は学内に駐車する」と宣言して以来そうしている。すると昨日の職員朝礼で今度は「生徒の自転車置き場の邪魔になるから自動車駐車場へ置いてください」と言う放送があった。

 普通ならここで腹を立てるころなのだが、朝夕の読経のお陰か、忘暮楼にはこの放送が観音様の声に聞こえた。「これは、観音菩薩が忘暮楼のために企んだことなのですよ。忘暮楼の健康のためには電車がいいのです。時間があれば途中下車して歩けるでしょう。忘暮楼はへそ曲がりだから、係の先生にこう言ってもらえば腹を立てて自動車通勤を止めるだろうとおもったのですよ」

 ぎゃあ、忘暮楼は観音様の作戦にまんまと引っかかってしまった。今日から忘暮楼は電車通勤である。朝は2駅前で降りて歩いた。帰りは3時間かけて松山市駅まで歩いた。うむ、21世紀はこれで行きたい。

 忘暮楼の特技は本を読みながら歩くことである。3、4行読んでは問題点を考える。ひとしきり思いをめぐらせてまた次を読む。この読み方はかなり能率がよい。二宮金次郎が歩きながら本を読んだのは忙しかったからだけではあるまい。この読書法の効能を知っていたに違いない。これを「歩読」と名づけよう。