忘暮楼日記  
  2000年11月 2日 木曜日

 さみだれを…


   「奥の細道」の「さみだれを集(あつめ)て早し最上川」はもと「集て凉し」だったそうだ。

 もちろん「早し」のほうにうかがえる詩人の視線、自然の完結性、圧倒的な量感は今の私にとっても好ましい。例えば私が最上川を下る船頭でいよいよ碁点・隼・ミガノセの難所にかかろうとしているとすれば、そりゃあ、誰がなんといっても「早し」である。

 しかし、きっと年をとったせいだと思うが、このごろは「凉し」がいいなあ、と思うようになった。「さみだれを集めて凉し最上川」にある開放感がなんともいえない。風を呼び霧を吹き雨を降らせる最上川も、五月晴れの今日は上機嫌な竜のような姿で人里に涼風を送りながら下っていくのである。