2000年8月21日 月曜日

共生(symbiotic relation)


  『アイデンティティ・ポリテックスを超えて 在日朝鮮人のエスニシティ』(金泰泳著 世界思想社)を読んだ。長い間読みかけのまま放置していた本だ。

「アイデンティティ・ポリティックス」というのは、「韓国・朝鮮人として誇りを持つ」「部落民として誇りを持つ」といった運動、本書の説明によると「被抑圧の立場に位置づけられてきた少数派が……支配文化から押しつけられた否定的イメージから、被抑圧者自らが語り直す肯定的イメージへと政治的に是正しようとする運動」(p47)ということだ。

 日本の韓国・朝鮮人社会は大きく変化している。すでに1969年には、日本で生を受けた朝鮮人二世の人口が在日韓国・朝鮮人全体の72.4%を占めるようになっていた(98p)。1994年現在で韓国籍・朝鮮籍の人々の結婚のうち、韓国籍・朝鮮籍どうしの結婚は全体のわずか18%程度。残りのほとんどは日本人との結婚だという(104P)。

 そんななかで、一世たちが追求した「祖国志向」「本国志向」にかわって「在日志向」が台頭してきた。もろもろの問題を「祖国の発展」「祖国の統一」「祖国への帰還」によって解決しようとするのではなく、「在日」を前提として日本社会の生存条件の改善によって問題を解決しようと言うのである。

 仏教の言葉でいうなら「あの世での成仏」から「即身成仏」への転換と言うことだ(成仏は死ぬことにあらず、幸せになることなり)。

 そこでそれまで等閑視され勝ちだった「就職差別」の撤廃、国籍条項の廃止、生活環境の改善、行政上の差別の除去、そして参政権獲得へと動き始めたわけである。

 四国朝鮮学校が今年学校の看板をかけなおした。「金日成主席万歳」的なものを降ろし単に学校法人名を書いたものに改めたのである。ずいぶんお金がかかったようで機会を見て少しでもカンパしなくちゃ、と考えているが、ともかくこれもそのような流れが朝鮮学校にも及んでいると言うことであろう。

 本書の「異質との共生」論批判はおもしろかった。AとBが共生すると言うことは、AはいつまでたってもAであることが前提になっており、Bも永遠にBであることが前提になっているという。つまり、女性はいつまでもいわゆる女性であり、障害者はいわゆる障害者であり、というふうに「あたかも不変のもの、不動のもの、彼らにもともと備わってきた『本質的なもの』……とであるかのように捉える見方だ」というのだ。

「共生」概念は、「在日志向」を支える思想として1980年代以降大いに期待されたのだったが、やはりこれも「諸刃の剣」であったという。日本人と韓国・朝鮮人がお互いの「異質性を尊重し、共存していく」というはたらきと、日本人と在日韓国・朝鮮人の間に現実に存在する権力関係を見落とさせるはたらきの二つの側面を併せ持っていると言うのである。  


天気曇り 
昨日の出来事◆8/12におこったロシアの原子力潜水艦の沈没事故、国際救助始まる。◆朝日、日韓会談の秘密文書を公開。ベトナム戦争との関連、いままであまり強調されていなかったのではないか。学生自分の日韓会談反対運動を振り返る。◆朝鮮(DPRK)、米韓合同演習強行なら南北交流凍結も。まあ、当然であろう。外交立国?の面目躍如。
今日の出来事◆かみさんの石鎚登山、直前になって体調不良者が出て中止。こういうのを「ドタキャン」と言うのだそうだ。ドタンバのキャンセルである。

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