2000年8月17日 木曜日

誰が誰の頭の上に原爆を落としたのか


  やっと『拒絶された原爆展』(マーティン・ハーウィット みすず書房)を読み終えた。最近集中力が弱くて一気に読みとおせない。3行読んだら眠ってしまうことがしばしばである。

 アメリカの国立スミソニアン宇宙航空(Space and Air)博物館が広島に原爆を投下したエノラ・ゲイ(B29 「エノラゲイ」は日本への原爆投下のために特別に編成された第509混成軍団の指揮官・ティベッツ中佐の母親の旧姓だそうだ)を展示することになった。博物館長のハーウィットや学芸員スタッフは、この飛行機をただ展示するだけでなく、原爆投下という戦争行為を歴史の文脈の中に置こうとした。原爆投下によって「すべてが終わった」わけではないからだ。

 原爆投下の理由あるいは是非については、「戦争一夜で終わらせた」英雄の物語のほかに、アメリカ国内にも史料に基づくいくつかの批判的見解がある。日本人が原爆によって受けた被害についても知っておくべきであろう。あの原爆投下が戦後の国際政治に与えた恐るべき影響にも目を向けるべきではないか。それらをバランスよく展示してアメリカ人により公正な意見を持つ機会としたい。そう考えたのだった。

 しかし、この企画に対する在郷軍人会(American Legion)や退役軍人グループの妨害活動は熾烈を極めた。英雄を悪者に仕立て上げるのか。なぜアメリカより日本の肩を持とうとするのか。「一夜で戦争を終わらせた」ことを称えればいいのだ。圧倒的な手紙攻勢を武器にマスコミを動かし議会を動かしついに注しに追い込んだ。『拒絶された原爆展』は当時の館長がこの事件の顛末を書き下ろしたものである。

 この本のなかで紹介されている、やや挿話的ではあるが私にとったいそう興味深かった事実を紹介しておこう。

 その1 
 世論調査会社マーティラ・アンド・キリー者が1991年12月に米国と日本で実施した調査結果。

問い ご存知のように、今年の12月は太平洋における日米の戦争が始まってから50周年になります。……米国の原子爆弾が広島と長崎に投下されたのは、戦争を終わらせる正当な手段だったと思いますか?それとも大量虐殺の不当な行為だったと思いますか?

答え

  1. 正当だった
    • 米国 63%
    • 日本 29%
  2. 不当な大量虐殺行為だった
    • 米国 29%
    • 日本 64%

 その2
 スミソニアン博物館はこの企画が中止に追い込まれるまで、実に、粘り強く、公正に、誠意を持って外部団体の要望をチェックし企画台本(スクリプト)の改善に全力を傾注する。

 「エノラゲイ」の展示室の外に「太平洋における戦い」に関する序論的な展示をおく、というのもそのひとつ。この展示によって核兵器の投下にいたる文脈をあきらかにしようというのだが、実はつぎのような事情もあったという。

 ……この展示の見学者は誰でも太平洋戦争についてある程度の知識があり、アメリカが真珠湾攻撃を受けたことや、戦況が決定的に変わるまでの3年間は苦戦を続けていたことぐらいは知っているだろうと私は予想していた。いまや私は間違いに気づいていた。

 映画製作担当のパトリシア・ウッドサイドが、最近、ワシントン特別区で該当インタビューの撮影を何度も行った結果、多くの若者は第二次大戦についてほとんど知らないことがわかったのである。

 原爆を誰が誰の上に落としたかさえ知らない人もいた。ロシアが中国に落としたと思っている人もいれば、日本が真珠湾で落としたと勘違いしている人もいた。(1994)

 「記憶」の継承は、教育活動と同じく思想や文化の「遺伝」である。日本にしても、アメリカにしても、きっと中国や韓国・朝鮮(DPRK)にしても、この種の「遺伝障害」が始まっているのであろう。


天気曇り 一時雨(しかし期待したほどではなかった)
昨日の出来事◆自民党村上参議院会長、<来年夏の参議院選は教育問題と憲法問題を前面に出して戦うべきだ。本来の政策を堂々と出して戦えば勝てるのがこれまでのパターン>と強調。◆8月8日連立与党が「防衛省設置推進議員連盟」を立ち上げた。憲法9条改悪の先取り、との指摘あり。◆8月15日には森内閣の10閣僚が「靖国」参拝。◆南北離散家族再会第二日。全3泊4日。「朝鮮(DPRK)中央テレビ」の「ひとつの民族が決して別れては暮らせないことを示している」という論評が印象的だ。◆南北首脳級(大統領と最高人民会議常任委員長)会談、9月に予定。
今日の出来事◆朝の散歩で自生のキキョウの花を見つけた。折り取られませんように。◆今治精華不当労働行為事件の地労委命令の分析。

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