1909(明治42)年3月3日
●韓沿海の漁業 永住的計画を要す
▲水産物の分布に就いて言へば韓国は東北海岸即ち豆満江より巨済島付近はオコツク海より分派せる寒流の沿岸に注げるものあるが為め冬春の時季にありては鱈、明太、鰊、鮭、鱒等の寒流棲息の魚類相往来し日本の北海道、樺太方面に於けると同種の漁業を為しうるのみならず捕鯨の如きも亦此方面においてし尚時季に依り鰤、鰮、鰆、鯖、鯛等の重要水産の漁獲をも為し得べし
▲又南海岸及び西海岸の一部は台湾方面より分派せる黒潮(暖流)の朝鮮海峡に流出せるものなるが為め暖流に属せる各種魚類及び介藻を生じ其利多大にして式を通じ漁採に従事し得べく殊に鱈、鯛、鯖、鰆、石首魚、刀魚の如き魚類の生産は此海域を以て最も多しとす西海岸にありては渤海(方)面より来れる一種の寒流が鴨緑江沖より黄海道付近に注げるが為め冬季は鱈、鰊びの寒流魚類の漁獲を為し得る一種の異彩あるのみならず夏秋春の三季は北西岸を通じ南海岸に異ならざる魚類の棲息あるが為め此方に於ても亦同一の漁業を経営し得べし
▲斯の如く朝鮮海岸には寒暖両流の注入するものあるが為め其両流棲息の魚類は概ね漁獲し得るの便宜を有するのみならず其太洋中には大小の島嶼碁布散点すること星羅の如きものあるが為め是等魚類の棲息遊泳を助け漁業経営には一層多大の利便を与へられあり之を日本の九州、四国東海道の如き単に黒潮の流域に悩む地方又は北海道樺太の如き寒流のみを受け居れる地方漁業状態比較せば其漁業経営に長短大小の差及び便否に多大の差異あり延て韓国の水産如何に有利有望なるかを知るべし

▲然るに日本の漁業者の韓海に出漁する者は一万二三千人に過ぎずして夫れすら其一定の根拠地を有志永住せるもの甚だ尠く韓国に於ける水産の利極めて豊富なり是等の魚利を挙げんことを欲せば単に或漁期を限り出漁するが如き姑息手段を以てしては到底其目的を達し得べくも非ず永住的計画に依り四季を通じて漁業を為すの方法を講ずるを要すと某技師は語れり
2007年6月16日
海南新聞
1909(明治42)年
3月3日
老馬新聞