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目次に帰る
2006年12月29日

新自由主義


久しぶりに少し読書意欲が湧いてきてこの間何冊か本を読みました。その中で内橋克人さんの『悪夢のサイクル』は久しぶりに大きなショックを与えてくれました。

私が大学2年生のとき学生運動に参加するようになりました。母親の落胆振りは相当深刻なものでした。うわさはすぐに郷里にひろがり、保守的な土地柄のせいで、同じ大学へ入学してきた幼馴染の後輩も一度も私に会いに来ませんでした。親にあいつとは付き合うなといわれていたのでしょう。後には私が教員として地元で就職しようとしたとき親戚の一人がそれをさせまいと県教委にねじ込んだという話しもありました。

それはともかく、私がそんな運動に入るきっかけになったのは「氷川下セツルメント」という子ども会サークルでほかのメンバーと一緒に読んだ一冊の本でした。『国民教育・・・』という本で、タイトルもすでに忘れたましたし、著者も記憶にない新書本です。ちょうど社会的に大問題になっていた学力テスト問題を学習するために先輩が取り上げてくれた本だったと思います。

私はこの本で、日本の戦後の教育行政の全過程が、朝鮮戦争休戦条約締結(1953年7月27日)の年の10月にもたれた池田・ロバートソン会談の「覚書」(日本側文書10月19日・米国政府のメモランダム10月21日)に端を発しているということをはじめて知ったのです。


今振り返ってみると、田舎育ちの18歳の私が抱いていた政治のイメージは、その時々の個々の政治家の思いつきでつくられた政策で進められるもの、といった程度でした。

それが、あまり知られていない日米の約束事で日本の将来のが決められていて、日本の政治の核となっているというのでびっくりしたのでした。

『悪夢のサイクル』で私はこれに匹敵するようなショックを与えられました。

特に驚かされたのは1973年、チリのアジェンデ政権を武力で転覆させたピノチェト政権のとった政策でした。その政策は次のようなものです。
  1. 価格規制の撤廃
  2. 関税の引き下げ
  3. 貿易の自由化
  4. 税制のフラット化(累進課税の緩和)
  5. 財政支出の削減
  6. 公的年金や医療保険の民営化
  7. 外資規制の緩和
  8. 金融取引の自由化
なんと日本政府(とくに小泉政権以後)がやってきたこと、やりたがっていることがずらりと並んでいたのです。これらの政策こそアメリカの経済学者フリードマンが提唱し、後に1981年に政権を握ったレーガン大統領によってアメリカの経済政策に大々的に取り入れられることになる新自由主義(=ネオリベラリズム=「市場原理」主義)だったのです。

新自由主義の核は「市場に任せておけばうまくいく」という考え方だそうですが、「民間でやれることは民間で」といって規制緩和をすすめ、郵便局民営化をも強行した小泉首相の政策はまさに新自由主義の実践でした。しかもそれは新自由主義の本家アメリカ政府の「年次改革要望書」による強力な圧力が生み出したものでもあったわけです。

南米の独裁者ピノチェトがとった経済政策をいま日本政府がほとんどそのままの形で踏襲しようとしているのですから奇怪な政治というほかありません。

『悪夢のサイクル』のなかで内橋さんはアメリカのポール・デンプシーという経済学者のつぎの言葉を紹介しています。
もし、あなたが日本で規制緩和しようと言うのなら、こう理解しておけばいい。要するに規制緩和とは、ほんの一握りの非情でしかも貪欲な人間に、とてつもなく金持ちになるすばらしい機会を与えることなのだと。一般の労働者にとっては、生活の安定、仕事の安定、こういったものをすべて窓の外に投げ捨ててしまうことなのだと。
日本人が今進まされている道はまさにポール・デンプシーの語ったとおりではないでしょうか。

ついでに言えば、平和条項を捨て去る憲法改正も最大の規制緩和なのでしょう。私が今年株で損をし投資信託で少し儲けたのも規制緩和の余波でした。新自由主義の戦線は広範で深刻なものであるようです。

※フリードマンは今年11月16日に死去した(享年94歳)。ピノチェトはフリードマンを追うように12月10日に世を去った(享年91歳)。