2000年4月日晴れ  
資料:5月26日の森総理大臣記者会見質疑応答全文
…「首相官邸」のホームページより…

森総理大臣記者会見
平成12年5月26日(金)

冒頭発言

 先般の神道政治連盟国会議員懇談会におきます私の発言につきまして、十分に意を尽くさない表現によりまして、多くの方々に誤解を与えたことを深く反省をいたしておりまして、国民の皆様方に心からおわびを申し上げる次第でございます。

 内閣総理大臣として、日本国憲法に定める国民主権、信教の自由を尊重・遵守することは当然なことでございまして、戦前のような天皇主権の下で国家神道を復活するというようなことなどは、私自信の個人的な信条としても、全く考えたこともございません。

 私の発言の真意につきましては、先般の参議院本会議において申し上げたとおりでございますが、本日改めて国民の皆様に対して直接私の思いを率直にお話をさせていただきたい、このように思った次第でございます。

 厳しく御批判を頂きました「天皇を中心とする神の国」という表現は、議員懇談会の活動の経緯を紹介する趣旨で申し上げたものでありますが、誤解を招く表現であったことは、私自身大変反省をいたしております。私の真意は、天皇が神であるということではありません。そのことは、私自身の個人的信条とも全く異なっております。

 私は8歳の時に終戦を迎えておりますので、自分の人生のほとんどは戦後の日本国憲法の下で教育を受けて育った私にとりましては、天皇とは、正に日本国及び日本国民統合の象徴としての天皇であります。

 天皇の地位はいうまでもなく、主権者である日本国民の総意に基づくものでありまして、日本国民統合の象徴であるという意味で申し上げたのであります。

 また、「神の国」という表現は、特定の宗教について述べたものではございません。我が国には、昔からその土地土地の山や川や海などの自然の中に、人間を超えるものを見るという考え方があったことを申し上げたものであります。

 日本には、食べ物などの自然の恵みに感謝をしたり、自然に対する畏敬の念を抱いたりといった生活文化があると思います。私はこのことを申し上げたかったのであります。決して天皇を神と結び付けようという、そういう趣旨で発言したものではありません。

 私は過去の歴史に学び、反省すべきことは反省し、未来に向かっていくことが必要であると考えております。

 戦後、日本は、歴史の反省の上に立ち、国民主権、信教の自由を憲法に定めました。この理念は今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであり、将来においてもこれを堅持すべきものであると考えております。

 懇談会におきまして、私が一番申し上げたかったことは、少年が相次いで人の命を軽視するような事件を引き起こしている中で、人の命の大切さへの理解や宗教的な情操を深める教育が大切であるということを申し上げたかったからでございます。

 私は、懇談会の席で、「人の命はお父さんやお母さんから頂いたものには間違いありません。しかし、もっと端的に言えば、神様から頂いたものであり、頂いた命は自分の命としても大切にしなければならないし、同様に人様の命もあやめてはいけない。そのことを基本にしないといけない。」ということを私は強くお話を申し上げたわけです。

 私が幼かった時代は、祖父母、あるいは父や母との触れ合いや、地域社会での暮らしの中で様々なことを教わりました。食べ物やきれいな水などの自然の恵みを大切にし、人や生き物の命を尊ぶこと、そうしたことが家庭や地域社会における普段の生活の中で、知らず知らずのうちに身に付いたような気がいたします。

 私は日本は古い歴史と伝統文化を有し、また、豊かな自然に恵まれた国であり、日本人はそうしたことを大切にしてきた国民であると思っています。

 しかし、戦後の経済成長の中で、日本人は物の豊かさに目を奪われて、命を大切にする心や、他人に対する思いやりの心や、日本の伝統文化を尊重するという、そうした心の大切さに対して、十分意を払ってこなかった面もあると思っております。この点も含め、今後、教育改革について建設的な議論が積み重ねられていくためにも、私の発言の真意については、是非とも御理解を頂きたいと思う次第でございます。

 以上、私の発言の真意について、私の思いを率直にお話をさせていただきました。

 冒頭にも申し上げましたけれども、私の発言が多くの方々に誤解を与えたことにつきまして、深く反省をし、国民の皆様に重ねておわびを申し上げる次第でございます。

 私としては、謙虚に国民の皆さんの声に耳を傾けながら、憲法の規定を尊重・遵守し、今後とも国政に全力を尽くし、私の政治目標である「日本新生」を実現し、国民の皆様の負託に応えてまいりたいと、このような思いで一杯でございます。国民の皆様の御理解を是非賜りますように、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。

 以上です。

質疑応答

【質問】最初幹事社から質問いたしまして、その後、各社から自由に質問したいと思います。  まず1問目ですが、総理は今、「天皇中心」と、「神の国」というものを分けて説明されましたけれども、懇談会では明らかに「日本は天皇を中心とする神の国」というふうに発言しています。これはやはり憲法が定める国民主権や、政教分離の原則に抵触する重大な発言と考えます。誤解を招いたとおっしゃるならば、発言を撤回するお考えはございませんか。

【森総理】私は先ほど申し上げましたように、天皇につきましては、当然、憲法が定める、つまり新憲法が定めるいわゆる象徴天皇、国民統合の象徴であるということは、これはもう改めて説明する必要はございませんし、私自身も、恐らく今の日本の国民も、天皇といえば、これは象徴天皇だということはだれもが認めているんじゃないでしょうか。  そういう象徴天皇であるから、日本の中心にあるというふうに、私はそういう理解をいたしておりますし、そして、親しまれる皇室であってほしいという、そういう思いが私にありますから、言葉足りずのところはございましたけれども、そういう思いで申し上げたわけでございます。  私の発言が十分に意を尽くさない表現であったことについては、度々申し上げておりますように、深く反省をいたしておりますが、私の発言に関する御批判については、私自身重く受け止めており、その反省を胸に政治家としての言葉の重みに思いを致しているところでございます。  様々な御指摘を頂きました。そのことを心に刻み、今後十分気を付けるつけるとともに、努力してまいりたいと、このように考えております。

【質問】この発言をきっかけに、先週末から各社の世論調査がありましたけれども、森内閣の支持率は急降下しております。一方で支持しないと答えた人は支持の2倍前後に急増しています。総理の発言が、こうしたものの大きな原因と考えられるんですが、この政治責任をどういうふうにお考えになりますでしょうか。お答えください。

【森総理】支持率は世論の動きを示す一つの指標として受け止めておりまして、それなりに注目し、私も謙虚にそのことは参考に常にさせていただいています。最近の調査で内閣支持率が低下していることについては、今回の発言がその影響を与えていることは、率直に私も認めざるを得ないと思っております。  今の発言が誤解を与え、また、様々な御批判を頂いたことは、私の責任であり、深く反省をいたしておりますが、私自身そのことを重く受け止め、本日、こうして国民の皆様の御理解を得られるように、私の思いを誠実に御説明をさせていただいたところでございます。  私としては、支持率については、謙虚に受け止めながらも、国家、国民のために何が必要であるかということを常に第一に考えることが大切であろうと考えております。  少年が関与するこうした事件が続発しておりますこと、こうしたことも国民の声に耳を傾けて、真摯に対応していかなければならないことは当然重要なことでありますし、また、何よりも小渕前総理が思いを残して逝かれました景気の回復に私自身も引き続き万全を尽くしていきたいと、このように考えているところでございます。  こうした努力を積み重ねていくことが、私に対するまた任務であると、このように考えているところでございます。

【質問】総理、一つお尋ねします。  総理のお話を聞く限りでは、まだ総理が問題の所在について御理解なさっていないような印象を受けましたのであえて申し上げますが、今、問われているのは総理の資質だと思います。  それはもちろん、発言内容はさることながら、総理になったにもかかわらず、御自身の立場、それから場所などをわきまえずに誤解を招きかねないような発言を平気で口になさる、その総理の軽さが今国民から問われていると思うんですが、その総理の資質自身について、総理御自身はどのようにお考えですか。

【森総理】資質の判断というのは、これは今おっしゃるとおり、皆様がなさることでもあるし、国民の皆さんがなさることでもあるかもしれません。しかし、私は今申し上げましたように、一つ一つ誠実に誠意をもって私は政権に取り組んでおる、そういう気持ちでございますし、そうしたことをただ今の私は説明を申し上げたことによって、国民の皆さんにも理解を得たいものだと、そう考えておりますし、また、そのように努力をしていくことが大事だというふうに考えております。

【質問】幹事社からもう1問あるんですが、総選挙日程、自民党内から「神の国発言」に対する悪影響を危惧し、6月と言われている総選挙日程を先送りすべきだとの意見がありますが、これについてどう思いますか。それと再考する考えはおありでしょうか。

【森総理】解散・総選挙の日程につきましては、世上言われておりますけれども、私自身、いつ解散するかについてはまだ申し上げておりません。今日も国会対策委員長にもおいでをいただきましたけれども、国会の状況も、今日少し様子を伺いました。さらに景気の動向を踏まえるということも、常々以前から申し上げてきたところでございます。そういう意味で、決断のタイミングを考えて、国民に信を問うべき、そういう時期であると判断いたしましたら、直ちに断行するというそういう考え方でおります。

【質問】発言をマスコミが誤解・曲解をして伝えたという声が与党にあるようなんで、改めて伺うんですが、今の御説明で、あの発言は憲法の範囲内だということでありますが、だとすれば、あの発言の後段の部分、神の国であることを国民に皆さんにしっかりと承知をしていただく、その思いで30年活動をされてきたとおっしゃいました。しかし、憲法はもう50年以上前からあるわけですから、その中の何を国民に承知してもらうために活動をなさったのか。  一方で、総理は青嵐会以来の筋金入りの改憲論者であります。最近も教育基本法と憲法はしっかり、思い切って変えたいおっしゃっております。やはり現憲法の国ではなくて、総理がつくりたいのは別の国ではないかと考えるのは素直な解釈だと思いますが、いかがでしょう。

【森総理】私は改憲論者だとは実は思っておりません。この間の党首討論でも、小沢党首と少し、時間は短こうございましたけれども、議論をさせていただきました。その中で、憲法について、改正論もあるし、創憲論もありますし、見直し論、いろいろあるんだろうと思いますが、そのことを国会で議論ができるようになったということはとてもいいことだと、私はこのように申し上げておきました。
 ただ、私は、今内閣をお預かりしておりますから、この憲法をしっかり遵守して、内閣の運営に当たるということは、これはいうまでもないということも申し上げておきました。その中で、かつて1年生のころに青嵐会に入っておりましたが、それはすべて全部改憲論者であったとは私は思っておりません。憲法をやっぱり見直したり、憲法を正しく考えていきたい。当時は筑紫さんもお分かりのとおり、そんなお話に触れただけで閣僚を辞めなければならぬような時代であったことも御承知のとおりでございますから、そういう時代でございましたから、憲法について大いに論議を深めようという、そういう会の趣旨には私は賛成をいたした一人でございます。そのことをもって改憲論者だというふうにきめ付けてくださると、ちょっと私も立場上も困りますが、堂々とみんなで議論をし、そして、いい憲法をみんなで考えていくというそういう国会の今回のこの調査会ができたことを私は大変喜んでいるという、そういう立場を採っているわけでございます。
 それから、教育基本法についてということでございますが、私は教育改革国民会議の今度の御議論の中で、やはり教育基本法というのをどうするかということを、やっぱり議論をしていただきたいなという、そういう実は希望を申し上げたんです。
 長くなって恐縮ですけれども、かつて私はいろんなところで、教育改革国民会議のパーティーの時にも申し上げたんですけれども、かつて私は中曽根内閣で教育改革をやるということで文部大臣をいたしました時に、いろんな制約ができました。その制約の中で、例えば教育委員会制度に触ってはいけないとか、教育基本法には触れてはいけないとか、そのことによって財政が改めて負担を伴うことはいけないとか、いろんなあのとき国会の論議の中で実は制約が付いたんです。だから、私は今回の教育改革国民会議は、そうしたことを、制約は付けないで、自由奔放にお話をしていただいたらいいのではないかということを、私はいろんな場面で申し上げてまいりました。
 ですから、この間の国会の決算委員会の際も、私は教育基本法を改めて、あるいはかつての教育勅語を、あなたは入れようとしているんですかという御質問がございましたけれども、そんなことは私はどこでも、一度も言ったことはない。ただ、もし教育基本法というものを考え直す、改めるという御議論があるなら、かつての、戦前から、戦後から、そういう日本の国の教育の一つのバックボーンになっていたものを、改めて、よくそのことも踏まえて議論したらいいのではないでしょうかということを私は申し上げてきたわけでございまして、決して改憲であるとか、教育基本法をすぐ変えるとか、そういうことを私は申し上げたことは、少なくとも、この総理になりましてからは当然でございますが、一度も申し上げたことはございません。

【質問】総理の発言というのはですね、その場でのリップサービス的な要素があったと思うんですが、しかし、結果としてはですね、天皇御訪欧中のオランダでデモ行進につながったりという大変な反応が出ています。総理の発言というのは、目の前にいる人に向かってしゃべっているのではなくて、常に全世界に向けた、開かれたメッセージであるといった辺りの認識がちょっと足りなかったんじゃないかと、その辺りについてお伺いします。

【森総理】天皇は今つつがなく御旅行なさっておられますので、いろんな報道は世界に伝わっておりますが、このことと、私は関連付けた報道は無かったというふうに承知をいたしております。是非、御無事で全日程を御無事で御旅行を進めていただければということを国民の一人としても願っているところでございます。
 それから、リップサービスとおっしゃるかもしれませんが、あのときのお話は、一つは、先ほど今筑紫さんのお話の冒頭にもちょっとございましたけれども、ちょうどあの国会議員懇談会ができましたのが30年前、ちょうど私が当選をいたしました時ですと。その当時のことを少し思い出を話しておりました。
 私たちの思いは、やっぱり開かれた新しい皇室が国民の皆さんから少しでも理解を得られるようにしていく。そういうことに対してできる限りの、私たちはお手伝いもしていこう、そういう思いでいたということを申し上げたと思います。
 そのことと結び付かれたところに、私の話の本意ではなかったところがあったわけでありますが、そんな思いでお話をしたことと、私はむしろあの日の話は、そのことを祝賀の意味もございましたけれども、むしろ、ちょうど沖縄のサミットの会場の視察をした翌日でございました。それから、ちょうど万国津梁館の完成のお祝いに出て、全国の子どもたちが集まったサミットをやっておりました。そこへ私は訪れたんです。で、子どもたちのその宣言をも私はちょうだいをするというそういう立場で、子どもたちの会場にいる、そのちょうど入る入口のところで実は小渕前総理がお亡くなりになった訃報が実は届きました。正直申し上げて、すごい気持ちが揺れました。しかし、平静でその会場へ行って子どもたちにお話をいたしました。
 よほどその時に、今小渕先生はお亡くなりになったんですよと子どもたちに言おうかなと当時思ったんですけれども、せっかく皆さんの気持ちがそういう楽しいサミットをやっていらっしゃった最後の閉会式のセレモニーでしたから、それをぐっと私は抑えました。抑えまして子どもたちの宣言文を見たら、自然を大切にしよう、環境を大切にしよう、それから地球の共生という問題に努力しようというようなことがずっと書いてありました。私はその文章を見ながら感想を申し上げるときに、小渕さんの亡くなられたこととが頭の中で交錯をしましたので、そこで初めて人の命というものを、地球の共生というならすべてのものに対する命というものを大切にしようということを実は私はそこで申し上げたのです。そのことを、実は翌日の連盟の議員懇談会の席でその話も私はしたんです。
 そういう話の中で、実は人の命ということの大切さということから、むしろリップサービスと言われるとそういうことの誤解を受けるかもしれませんが、むしろその懇談会にはそのことを主眼として、私が言いたかったのはそこのところだったわけでありまして。

【質問】ただ、やはり先ほどの冒頭で質問がありましたけれども、「天皇中心」という言葉と「神の国」という言葉をある意味で意識的に分けてというのはなかなか我々は納得し難いものがあるんですね。で、その誤解を招いたというところではなかなか済まされない問題ではないか。むしろなぜ撤回できないのでしょうか。撤回された方がその真意は伝わるのではないでしょうか。

【森総理】私の思いは先ほどから度々申し上げておりますけれども、天皇というのは正に私自身の自分の人生から見てもこれは象徴天皇であり、国民統合の象徴であるという大前提で申し上げているわけです。
 そういう意味の中で、天皇と神と結び付けるというような、そんな私の思いはございません。神というのは先ほど申し上げておりますけれども、人々の心に宿る私は文化だということもその場所で申し上げております。あのスピーチをお読みいただければ分かると思います。で、その時は神様のことも言っていますし、仏のことも言っていますし、そのすべての人間の心の中に宿るもので、ある種の文化だとも言っています。そのことは決して侵してはならないことだ。だから、同時にそのことを大事にすべきことだと、そういう趣旨で私は申し上げているわけでございますから。

【質問】発言そのものは間違っていなかったということですか。

【森総理】私は、その点については間違ったことを申し上げているとは思っておりません。

【質問】総理は命の大切さを説きたかったとそういうことであればですね、あの「日本は天皇を中心とする神の国だ」というスローガンの下でですね、かつてそういう思想の下でたくさんの命がむしろ失われた歴史が日本にはあるわけでして、全く不適切な引用だと思います。そこの部分だけでもなぜ撤回なさらないんでしょうか。

【森総理】私も今あなたのおっしゃったとおりのことを思っています。かつては天皇については様々ないろいろなやはり当時の歴史的な見方もあったんだろうと思いますが、先ほども冒頭に申し上げましたように、そういう時代時代の歴史、反省、そういうものを乗り越えて、我々日本国民は今の憲法を定めたわけですね。

【質問】では、なぜ撤回なさらないんでしょうか。

【森総理】私はそういう思いで申し上げているのではないということを申し上げているわけです。

【質問】ではですね、総理、なぜ「日本は天皇を中心とする」と、「中心」という表現を使って、なぜ天皇を象徴とすると。その「中心」と「象徴」という言葉はですね、私は意味が大分違うと思うんです。
 で、あの歴代の内閣総理大臣のですね演説集を見てもですね、そのもちろん、吉田茂さん以降はですね、象徴という言葉を使うわけですね。天皇を象徴とするという、その象徴という言葉を使うんです。だけど、その前のそのあの明治憲法下における総理の演説の中にはですね、あの天皇の大権の下でその一切を捨てて御奉公申し上げてこそ日本国民でありますというようなことをですね、これはあの鈴木貫太郎内閣総理大臣の演説なんですけれどもね、そういうそのあの私が解釈するには天皇を中心とするという言葉に近いようなあの演説をされているんです。
 つまり、そういうその象徴という言葉と中心という言葉は、つまり意味がかなり違うと思うんです。そこを踏まえてあの内閣総理大臣の、つまり今までの積み重ね、歴史があるわけですから、そこを踏まえていけばやはりあの場では総理は天皇をその象徴とするうんぬんという言葉をですねお使いになるべきだったんじゃないんでしょうか。

【森総理】そういう御指摘を頂ければそうかもしれません。でも、私はさっきから度々申し上げておりますように、私の年齢からいえば、もうそういう教育を受けた時には新しい憲法の下で教育を受けているわけですから、天皇を私は象徴だということは当然のことと承知の上でものを申し上げているわけであって、歴代の・・・。

【質問】歴史はそうでなくて。

【森総理】歴史は分かりますよ。だから、その言葉遣いに、もし御批判があれば私は先ほど申し上げた、そういう面では不本意といいましょうか、行き届かなかった面はあるけれども、しかし今おっしゃったような歴代の総理というのはある意味では戦前、戦中の体験をしていらっしゃる、そういう皆さんですから、意識的にやはり象徴天皇ということをおっしゃったのかもしれません。しかし、私は天皇というのはもう今の憲法における象徴、国民統合の象徴だということはもう頭の中にも心の中にももう入っていますから、改めて象徴天皇ということを私は申し上げなくても、私はそういう自分なりの理解をいたしておるわけです。
 ですから、そういう憲法で定めた象徴天皇であるということだから、私はそれは中心だという言葉であっても、私はかつての昔の神格化された、そういう天皇だという思いは全く私の頭の中にも心の中にもございません。

【質問】総理のお気持ちの中にそういうものが無いのは分かるんですけれども、歴史というものがあって、内閣総理大臣という職にある方々が今までこういろいろ発言されてきた、そういう歴史というものがあるんだと思うんです。その中における森総理大臣なんですよね。だからあの、やはり我々もあの問題発言として取り上げているんだと思うんです。
 つまり、総理のお気持ちの中では象徴天皇かもしれないけれども、内閣総理大臣としてはですね、やはりその天皇を中心とするという言葉を使うとですね、その今までの歴史があるわけですから、当然そこにはその誤解を生じるということは、あの当然その判断としてあってしかるべきだと思うんです。

【森総理】冒頭にも申し上げましたように、神道政治連盟国会議員懇談会の30年のお祝いの会でございました。先ほどリップサービスじゃないかということも指摘を受けましたけれども、その会の祝辞に私は参ったわけでございますから、その皆さんには改めてそこで象徴うんぬんということは私はそういう必要もあえて無いと思いました。
 ただ、30年前に、親しまれる皇室にしよう、そういう思いで国民と皇室の間が本当にいい関係になるようにしようという、そういう皆さんの活動でありましたから、私も賛意を示してそういう会の私もメンバーとして努力しましたよという、そういう思いで私は祝辞で申し上げたわけでございます。
 確かに御指摘どおり、そういう会でお話をされても総理であるという立場を忘れたのではないかという今の御指摘とおしかりはございましたから、その点については確かにそういう思いはございますけれども、やはりそれは先ほど申し上げましたように、意を尽くせなかったことについておわびを申し上げたいというのはそういう意味でございまして、あくまでも懇談会での私は祝辞のつもりで当時の思い出を語って申し上げたものだというふうに是非御理解をいただきたいと思うんです。

【質問】ただ、総理の御発言はもう記録として残っておりますし、全世界にも伝わっております。で総理がお認めになるように、あの、誤解が生じていることは間違いない事実だと思いますから、この天皇を中心とした神の国であるという、その、日本国総理大臣としての認識として、この言葉が残ってしまうことはですね、総理の本意でもないだろうと私は理解するんですが、とすれば訂正なり撤回されるのが最も理解される、その、対応だと思うんですが、もう一度伺いたいと思います。

【森総理】私は先ほどから申し上げましたように、そういう思いで申し上げていないということでありますから、改めてここで国民の皆様にも是非御理解をいただきたいと思って、あえてこうして会見の席で申し上げさせていただいたわけでございまして、今後そうした点を十分に踏まえ、反省をしながらこれから責任を持って政局の運営、政治の運営に当たっていきたいと、こう申し上げているところでございます。

【質問】ということはその、言葉としてですね、その、総理大臣が日本の国の在り方について天皇を中心とする神の国であるという認識を述べられたという事実、その言葉が残っても、これはまあ構わないと。

【森総理】構わないということを申し上げているよりも、私自身はそういう思いで申し上げたのではないけれども、そういう不本意なといいましょうか、意を尽くせない言葉で残りましたから、そういう趣旨ではないんですということを今この場を借りて国民の皆さんに改めて申し上げているわけでございまして、そこを是非御理解をいただきたいと、こう申し上げているわけでございます。

【質問】言葉そのものがですね、不適切だったという認識はお持ちですか。

【森総理】言葉そのものは、言葉はいろいろ言い方があるんでしょうけれども、先ほど申し上げたように、その意を尽くさない言葉、はっきり言えば先ほどちょっと御指摘がございましたけれども、それならば象徴と付ければよかったじゃないかということになるわけですが、そういう面では足りないところもあったのかもしれません。だから、そこは大変誤解を生み、皆様に御迷惑を掛けたことについておわびを申し上げたいということを申し上げたのはそういう点でございます。

【質問】発言の後段の部分ですね、これからも神社本庁の指導を仰ぎながら政治活動をしていかなければならない。これが私の使命でありますということもおっしゃっていますね。つまり、それは明らかにこの憲法20条に定めるその政教分離に抵触する話だろうと思うのですけれども、総理の認識が甘いのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

【森総理】内閣を、あるいは今の行政府を一つの特定の宗教にうんぬんしているというようなことは私は申し上げていないと思います。人それぞれ宗教というのはそのお話の中にも入れたと思います。神様もあり、仏様もあり、具体的にいろいろと申し上げたと思います。それは皆さんの心の中に宿るものであり、ある種の文化だと。それは侵してはならない。侵してはならないが、信教の自由というのはそれを非常に大事にすることだと、私はそう申し上げたと思っています。
 ですから、私は神社本庁の意を受けるとか、そういうことを申し上げたというところを今御指摘がありましたけれども、私の気持ちとしては私はまあ大変卑近な例で恐縮でしたけれども、自分の孫のことも話しました。朝、私は神棚に手を合わせます、水を上げます。孫がついてきます。しかし、その孫は日曜日になると教会に行きます。それでいいんだと私は思う。そういうことも私はその会合で申し上げたわけです。皆さんの心の中に。

【質問】それは総理個人でしたらいいんですが。総理の立場で・・・。

【森総理】ですから、私の個人はそういうことでございます。だけれども、そのことと内閣と何も重ねているわけじゃないのではないでしょうか。

【質問】あの時は総理は公用車で行かれていましたし、総理として御発言なさったと受け止めるのが普通だと思うんですけれども。

【森総理】私は実は大変いつも悩んでいるんです。公用車で行くべきかどうかというのはいつも迷って、警護官とも少し言い争うことはあるんですが、できれば降りて自分で行きたいんですけれども、私用車に乗ってはいけないということを警護の皆さんはおっしゃるんです。じゃあ自分の車でそこで乗り換えて、今日もそんな議論をしたんですけれども。
 あれは小渕前総理のちょうどお通夜でございましたし、そのお通夜に私は行ったその帰りでございまして、最初のパーティーに顔を出せなかったので、その後、帰りに寄りました。ただし、私は家内と一緒でございましたから、家内は私用車に乗せて、そしてホテルの前で家内を待たせておきまして、私が公用車で行ったことは間違いないけれども、公用車で行ったこと自体、私は自分なりに公私のけじめは常につけながらおりますけれども、そういう事情もあり、そういう環境もあるということは是非御理解をいただきたいと思うんです。私は自分の気持ちの中には絶えず常に公私というもののけじめをつけろということはずっと父親からも教わったことであって、私自身もそのことは信条にしているぐらいでございます。

【質問】外から見るとですね、第三者が見れば、総理が幾ら個人的にそう思っても、我々第三者が見るとけじめがついていないとしか見えないんですけれども。

【森総理】私は、だれよりも一番けじめをつけてやっているつもりでございます。

【質問】総理はさっき、御自身は戦後の教育を受けられて、現憲法の理念が根付いておるということを強調されたんですけれども、1973年にさっき話が出ました青嵐会ですね、これが発足したときに出された著書の中で、当時の森総理自身がですね、あの、教育観についてインタビューに答える形で記事にまとめられているんですけれども、その中には私たちは完全に戦後の教育を受けたけれども、人間の基礎的な教育についてはですね、要するに戦前のものなのだと。だから、逆に自分の政治信条というんですか、思想信条ができたところは戦前のあれに基づいているんだと。だから、教育というのもそういう観点から考えるべきだと思うんだという考えを披瀝されていますけれども、これは明らかに矛盾しているとは思われませんか。

【森総理】そのことはいいと思うと私は申し上げておりましたか。私は子どものころにはやはり人並みに当時は、今に大きくなったら軍人になろうなんて、そんな夢を持っていたことは事実です。それは小さな子どものときのことです。
 しかし、結果的に大変誤った、やはり当時の大人たちの判断で日本が敗戦を迎えてこういう思いをしていると。そういう反省の中から新しい時代をつくり上げていかなきゃならぬ。そういう思いで私は常に行動してきたつもりでございますし、そういう信条でございますから、何事もすべて戦前のものがいいということを私は申し上げているわけではないんです。
 よく教育勅語のことで先ほど出ましたけれども、その中にはやはり時代は変わっても不変のものがあるはずなので、そのことも全部当時としては国会の決議で排除してしまったけれども、もし教育基本法の議論をし、教育のバックボーンというのは何だろうということを議論するときには、やはりそうしたこともやはり想起をして検討してみる必要があるのではないかと。ただし、私はあの皇国史観であるとか、ああいう考え方は採らないということも、これは度々申し上げているところでございまして、今、御指摘がありましたように、私の個人的な幼少のころの、小さなころのそういう基礎というものは、戦前の子どもの時代のものが基礎として残っていることは、それは御指摘のとおりだと思います。その反省の中から新しいものをつくり上げていかなきゃならぬという、そういう思いで私自身は政治家になったと、そう思っております。

【質問】今おっしゃった教育勅語なんですけれども、今おっしゃったようにですね、衆議院本会議でですね、あの、排除に関する決議というのが全会一致で可決されています。その中で教育勅語について、根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基づいている事実は明らかに基本的人権を損ない、かつ国際信義に対して疑点を残す元となる、とこういうふうに全会一致で決議されております。
 仮にその、部分であれ、今後の新しい教育の理念を考えるときに、この教育勅語の中からですね、引用されるというのは極めて不適切ではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

【森総理】これも国会の答弁で申し上げてきましたけれども、それは私は復活しろということは一度も言っていないんです。確かに国会で排除したという記録は昭和23年ですから、私たちの小さな子どものころにそういうことがあったということは後から大人になって分かるわけですね。
 で、その中のいろいろな中には、例えば親孝行のこととか、夫婦仲よくしろとかというようなことがあるわけでしょう。だから、それは時代が変わろうと、どんな背景があろうと、その真理は私は不変のものだろうと思う。だけど私は、・・・。

【質問】根本理念が否定されている。

【森総理】ちょっと待ってください。ですから、私はその教育勅語を復活しろということは一度も言っていないですよ。だけど、教育基本法やそういうものにもし触れるということがあったら、かつてのそういう問題も勉強の材料にしてほしいと。していただければいいのにねということを私は申し上げてきたつもりでございます。
 いずれにしても、そうしたことはやはり心の問題なんであって、今、恐らく日本の国民の皆さんは、今のこの社会的なこの病理の現象というものに、やはり一番みんな心を痛めておられる。少年問題にしても、警察の問題にしても、ですからそういうことに政治はできるだけ早く応えていかなきゃならんことは、いうまでもないと思う。特に、心の問題っていうのは、ここにいらっしゃる記者の皆さんだって、全部違うと思うんです。宗教観も。私も違います。同じ自由民主党の国会議員でもみんな違うと思います。心の問題については。そういうことを、やはりもっと自由に議論し合えるということが、私はなければいけないと思うんです。
 私は、今度のこの問題で皆様方にも御批判を頂いた。毎日、毎日手紙とファックスというんでしょうか、もうとにかく大変なものを頂いています。こんなに多くの皆さんがこのことについて関心を持ってくださったのかなと。私は、それをテープにとったものを帰ってから一々聞いておりますが、泣きながら話する人もおられる。こんなにまでたくさん国民の皆さんがこのことについて、御心配を、もちろん、賛成もあれば反対もあります。しかし、どっちかというと多くの方が私を支援してくださっている御意見が多いです。私は、そういう皆さんに一々御返事もしたいなと思いますけれども、お名前だけの方もありますし、電話だけの方もございますから、私はこの場を借りてそういうことを、私にいろんな形で御指導いただいたことに、私はお礼を申し上げたいなとそう思っております。
 やはりこうした問題は、やはり大事な私はテーマだと思いますから、政治家としても、また皆様方も社会に対しいろんなことを訴えていかれる立場の方でございますから、心の問題というものを大事に考えていただきたいなという、そんな思いで私は今もいるんです。

【質問】大事なテーマだとしたら、もう少し時間を頂けませんでしょうか。

【森総理】これからも、またいつでも会見の機会もあるでしょうし、それから時々ぶら下がりというんですか、そういう皆さんとのお話する機会もございますし、私は十二分にお話をする気持ちは十分持っております。今も誠意をもって、私はお答えを申し上げているつもりでございます。

【司会】予定の時間を10分オーバーしておりますんで、一通り終わったと思いますんで。

【質問】予定の時間30分で。

【司会】じゃ、最後に1問だけ。

【質問】政治家に失言というのは、これまでも過去にもいろいろあったんですが、基本的に政治家の失言というのはその後になって、あのときに主観的に、私は実はこういう意図だったんだという形で、訂正されたケースというのはほとんどないですね。政治家の失言というのは、言葉に出たとたんですね、客観的な事実になって、その客観的な事実が言葉としてですね、我々にとってどう受け止めるかという問題が必ず出てくる。それについてね、後になってあのときは主観的にそういうつもりだったんだという趣旨の、そういう弁明の仕方というのは、政治家としては非常にこれまでのやり方じゃないし、今回の場合は特にですね、一国のリーダーとしてね、憲法を背負って発言されている話ですから、その点については明確にね、撤回するのかしないのか、もし総理が撤回せずと言えば、我々は撤回せずと書きますし、その辺の話は明確にしていただきたいと。
、もう一点ですね、今聞いてますと、やはり総理の資質の問題というのは如実に出ていると思うんですね。
 要するにですね、総理にとって一番重要なのは、一国のリーダーとしてですよ、やはり信頼と尊敬を得ることだと思うんですね。そうでなければ、これからね、難しい政治をやっていくのに、国民に痛みを伴うですね、政策を展開できない。しかし、今ね、町を歩いているとですよ、総理に対する風評は、決してそういったものは少ない、率直に言ってそれは残念です。そういったことをですね、総理自身は本当に真剣に受け止めてられるのかどうかね、そしてそれをどうやってね、これからね、失地回復されようとするのか、その可能性はあるのか、率直に聞きます。

【森総理】これも、度々の御質問でございましたから、申し上げてまいりましたけれども、意を、伝わらなかったという言葉がございましたから、そのことについては率直に御迷惑をお掛けをしたということで、おわびを申し上げております。そして、私の気持ちとしては、こういう思いで、こういう考え方でございましたということを、今この場で皆様方に御説明をさせていただいて、是非御理解を賜りたいということを、お願いを申し上げているところでございます。
いまして、これからもこの日本国憲法を遵守し、そして先ほど申し上げました重要な問題について、全力を挙げて取り組んでまいりたい、こう申し上げております。その結果、多くの国民の皆さんから理解が得られるように、私も努めていかなければならぬと思っております。
得るかということについては、これは私がどうこう申し上げる立場ではございません。皆さんから理解を得、信頼を得られるように、一層努力していきたいと、こう申し上げておきたいと思います。

【司会】それでは。

【森総理】ありがとうございました。