2000年4月28日  
忘暮楼はナメクジか

 近所の酒屋の奥さんがナメクジの退治法を教えてくれた。なんでも、ナメクジはビールが好きだそうで、底の深い容器にビールを入れておくとナメクジが寄ってきて溺死するのだそうだ。

 我が家もナメクジにはひどい目にあっているので、さっそく缶ビールを一本買って、我が家の花壇にいらなくなったコーヒーカップを埋め込み、ビールを注いでおいた。(ビールはそんなにいらないので残りは私が失敬した(^^ゞ)。 翌朝、コップをのぞいてみると、十数匹のナメクジが溺死、さらに一匹1.5pほどのナメちゃんがビールに首を突っ込んでいる。大した効能だ。

 さて、そのナメちゃんの様子を観察していると、彼はまもなくビールから首を抜き出し、ツノを2本ピンと立てて、やおら身を翻して、コップの壁を静かに登り始めた。それは凛々しい姿であった。「いつまでもこんな生活をしていては行けないんだッ」、という決意が熱く伝わってくるほどであった。ナメちゃんはついにコーヒーカップの縁まで登ってきて一息ついている。

 私は、「これはまずい、なんとしてもビールの池に突き落としてくれようぞ」、と指を伸ばそうとした。と、そのときだ。なめチャンは身体を180度ねじって、なんと、またしてもビール池の水際へ降り始めたのである。

 そのときの寂しい、絶望的な、自嘲的な姿を想像してほしい。「今後永久に酒が飲めないんだって? やだやだ、酒が飲めないくらいだったらもう1度飲んで死んだほうがましだ」とナメちゃんはわめいていた。忘暮楼にはその叫びがはっきり聞こえた。

 ナメちゃんは、またツノをピンと立てて、ビール池の水際に降り、ツノをちゃんと収めたあと首をビールに突っ込んだ。そして、そのまま動かなくなった。ごっくんごっくんビールを飲んでいるのだ。しばらくしてなめちゃんは♪ズールズルと♪ビール池に沈んで行った。なにやらわが身を見ている感があった。