2000年41 土曜日 晴れ   
ライバルではなく敵だ


 

   忘暮楼の勤務校の卒業生で柔道で活躍している青年がいる。彼は最近オリンピック出場をかけた試合に臨んだ。相手は年来のライバル。

  新聞報道によると彼は試合に臨む意気込みを次のように述べたそうだ。

「(相手については)ライバルではなく、だと考えている。」

 忘暮楼はがっかりした。もうきっと10年数年柔道をやっているだろうに、この程度のことしかしゃべれないのか。

 「ライバル」は勝ったり負けたりしながら、あるいは勝ちつづけたり負けつづけたりしながら自己を高めて行くことのできる相手である。一方、「敵」は殲滅すべき、あるいは屈従さすべき人物である。

  軍事や政治や出世競争の世界とは違って、スポーツの世界に元来「敵」はいない。反復して楽しめてこそゲームである。反復するためには、相手は今日も対等の立場で生きていなければならない。

 彼は結局この試合に敗れオリンピック出場の夢はかなわなかったが、それで良かったと思う。彼は大事なところで間違っている。 この試合から学ぶべきものは多かったのではなかったか。


 高校野球は「選抜」の真っ最中。勝ったチームの監督が語っていた。

「相手のエラーにつけこむことができたのが良かったと思います。」
 スポーツの常道である「相手のエラーにつけこむ」と、スポーツの常套句である「正々堂々と戦う」とはどうつりあうのだろうか。