2000年03月14日(曜日) 快晴
空っぽ


 「空っぽ」2題。

 王立誠さん(41)が棋聖戦5連覇を目指していた趙治勲棋聖(43)を破って5人目の 棋聖になったそうだ。その王さんが好きな言葉が

退一歩海闊天空

だという(朝日新聞「ひと」)。

 「一歩を退けば、海ひろからん空むなしからん」とでも読んでおこうか。「いやなことがあっても、一歩ひいて辛抱すれば気持ちが広くなる」と王さん。

 日本の辞書では「天空海闊」(テンクウカイカツ)と出ている。「さえぎるもののない空、自由に流れてゆく海」ということだろう。

 一抹の不安、いささかのこだわりを抱きながら生きているとき、一歩退いてみると自分の弱点が見えてくることがある。自分の弱点が見えれば、無理をしなくてすむし、また強くなれる。より広い世界に住まうことができる。そんな体験は忘暮楼にもある。

 早稲田大学の53歳の哲学教授が『ただ走る哲学者』という本を出したそうだ(しんぶん赤旗「本と人と」)。

「人が走るのは自分と言うものを空っぽにできるからかな。空っぽになるのは、人生の知恵であり、文化の究極の喜びです。」ときた。

 すでに21回のフルマラソンを走りぬいてきた哲学者。「からだが空っぽになり、自分が何にでもなれる、という喜びの充実が、繰り返しを呼ぶ」。

 「何にでもなれる」と言う確信はまさしく文化そのものなのかもしれない。