2000年03月01日(水曜日) 朝厳寒 石鎚真っ白
逆算の人生


 『聖(さとし)の青春』(大崎善生著 講談社 2000/2/18)を一気に読んだ。

 「聖」は平成10年になくなった将棋のプロ棋士、村山聖。

 確か今日からプロ将棋界の頂点であるA級(10名)順位戦が始まる。聖こと村山聖八段は、昨年、このA級在籍のまま29歳で他界した。幼いときから難病ネフローゼとの闘病生活の連続。

 小学生の頃、入院中に将棋の本と出会う。ひたすら将棋の本を読む。初めて将棋を指したときアマ4段になっていた。

 昭和59年、13歳で奨励会行きを決意。親や親戚の反対の中で「谷川を倒すには、いまいくしかないんじゃ」と懸命の説得。

 今、奨励会6級で入会したとして、奨励会を5年で卒業したとしてもプロ入りが18歳になる。名人に挑戦するまでには5つのリーグを勝ち進まなければならない。そうすると、最短5年でも23歳になる。自分の命は限られている。どうしても今奨励会に入らなければ生きているうちに名人にはなれない。

 そういってまわりを説き伏せた。

 その後は、昭和61年暮れに2年11ヶ月で奨励会を卒業、17歳で晴れて四段となりプロデビューした。プロ第一年目は4ヶ月間だけだったが、その間の成績は12勝1敗という驚異的なもの。

 何度も何度も繰り返される病状悪化、その度に生死のの境をさまよう。26歳、平成7年A級トップテンの仲間入り、名人位を射程に入れた。そして志半ばにして病死。進行性膀胱ガンだった。

 逆算の人生であった。

 この本で、逆算の人生観が生み出す、全力疾走の迫力、贅肉をそぎおとした生活の潔さ、すべてのいのちへの憧憬、そんなものをたっぷりと味わった。そして、すこしく、おのれの人生を恥じた忘暮楼であった。