2000年2月16日(水曜日) very cold
ルネサンスの遠近法


 授業中に前面中央に置かれた教卓から教室の机や椅子や生徒たちを眺めると、教室全体に見事な「透視図法」が成立している。透視図法が成立しているというのは変な言いかただ。要は、遠いものは内側かつ上側に見え、近いものは外側かつ下側に見える、という印象が鮮明だということだ。

 ところが、同じ状況を教室の隅に立って眺めると、遠いものは内側に見えるという印象が急に弱まり、透視図法は役に立ちそうもなくなる。つまり、透視図法は万能ではなく、これが役に立つ画題とそうでない画題があるということだろう。

 確かに、貴族の肖像画や、宗教的なイコンや、あるいは欝蒼とした森などを描くときには透視図法は捨て去られるのである。

 透視図法もルネサンスに発達したものだそうだが、ということは、この時代には透視図法が効果的な画題が好まれたということではないだろうか。

 透視図法が得意な画題といえば、この図法は別名「線遠近法」と呼ばれるくらいだから、「たくさんの直線で構成されている光景」ということになる。しかし、自然の中にある「たくさんの直線で構成される光景」といえばクモの巣くらいのものである。たくさんの直線が見えるのはほぼ間違いなく人工のものである。

 こうして、人工の光景、例えば、ギリシア・ローマの巨大建築物、カソリック教会の壮麗な寺院、「最後の晩餐」のような室内の出来事が透視図法によって鮮やかにとらえられるのである。やはり、「古典への回帰」「カソリックのリベンジ」が、透視画法というルネサンスの技術をも育んだというべきなのであろう。