2001年 12月22日 土曜日

銃弾45発


 久しぶりに板門店(パンムンジョム)を訪れた。イムジン江は大部分が結氷しており、氷の隙間の水面には数千羽の雁が羽を休めている。時おり一斉に飛び立ち、その中のいくつかの群れが編隊を組んで次々に我々の頭上を通過する。10メートルくらいの上空だから雁たちの「キロキロ」というおしゃべりが聞こえてくる。

 旅行社のバスでイムジン江を渡りったところにあるベースキャンプで韓国軍差し回しの専用バスに乗り換える。兵士が一人添乗する。いよいよJSA(共同管理区域)に入るのだが、その直前に添乗兵が所定の場所で下車して腰の拳銃に実弾を装てんする。

 ガイドが「ここで兵士が乗客の数だけの実弾を装てんします。今日は45人のお客様ですので15発は拳銃にこめ、残り30発は袋に入れて受け取ります。」と説明する。???

 この儀式の意味がよく分からなかった。質問する機会があったのだが、ちょっとばかばかしい質問かなあ、と思ってそのままにしていた。

 翌日の朝食のときいっしょに旅行している女性が「あれって、私たちを撃つための弾丸だったのよねえ」と大発見。そうだったのだ、我々の誰かが北側へ亡命・脱走しようとしたら射殺できるように準備してあるのだった。だから、銃弾を「お客様」の数だけ装てんしたのだ。

 45発で全員の亡命を阻止することが出来るかどうかはわからないが、兵士は要するに「亡命したら射殺する」というメッセージを送ってきたわけだ。

 南北会談のための兵舎にも入った。テーブルの上のマイクロフォン・コードが「軍事境界線」になっているというあの兵舎だ。ここの室内にも、「北」に背に向けていつでも発砲できる姿勢で保っている兵士がいた。この兵士も、なあんだ、我々の「亡命」に備えているんだ。

 ともかくこの区域のキーワードは「亡命」である。今回はじめて韓国人の団体客を見かけた。ここは韓国人はこれないところと教えられていたのでガイドに聞いてみたら、「北を故郷とする人たちですが半年前に申し込んで絶対亡命しないという保証のある人たちだけが許可されます。JSAに勤務する兵士も上流家庭の子息たちで亡命する心配の無い人が選ばれているんですよ」との説明だった。


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