2001年 10月18日 日曜日

俵義文さんの講演レジュメ


 愛媛大学法文学部棟で、「今、なぜ『つくる会教科書』なのか?」と題して、俵義文さん(「子どもと教科書全国ネット21」事務局長・出版労連教科書対策部副部長)の講演があった。会場で講演レジュメを頂いた。今後なんどもお世話になりそうなレジュメである。俵さんの承諾が得られたので正式に転載する(書写転載ですので誤字脱字は忘暮楼の責任です ご一報ください)。

 
 

安心して手わたせる教科書を求める署名連絡会・講演レジュメ
2001年11月18日

今、なぜ「つくる会教科書」なのか?

〜戦争のできる国づくりが進むなかで〜

俵義文
(「子どもと教科書全国ネット21」事務局長・出版労連教科書対策部副部長)
1.はじめに

(1)戦争法(新ガイドライン関連・周辺事態法)・盗聴法・住民台帳法・国旗・国歌法などの制定、憲法調査会設置・有事立法・教育基本法改悪・憲法改悪などは「戦争のできる国」「戦争をする国」づくりをめざしている。

(2)「日の丸・君が代」の押し付け(強制)、教科書「偏向」攻撃、教育改革国民会議報告は、「戦争国家日本」の内実づくり--国民意識の統合をめざすもの。

2.執拗につづく教科書攻撃(歴史修正)の策動

(1)1993年の自民党「歴史・検討委員会」(侵略戦争・加害の否定、教科書既述攻撃を決めた)が出発点。

(2)歴史修正派による講演会シンポジウムは1年間で250回以上(俵の調査分のみ)、実態はこの3倍と推定される。

(3)日本人(とりわけ、子どもと青年)の歴史認識をターゲットにして、日本の侵略戦争と加害を否定する動きが強まる。

3.「新しい歴史教科書をつくる会」の運動

(1)会員数10445名(00年3月31日現在)、全都道府県に支部、年間4億2000万円の収入で活動。

(2)中学校教科書(歴史的分野・公民的分野)の2000年4月検定申請。--「つくる会」の歴史教科書は、1)「天皇を中心とした神の国」の実現、2)侵略戦争肯定・美化によって再び「戦争ができる国」「戦争をする国」をめざす内容。公民科教科書は、人権を否定し、憲法改悪をめざす内容。

(3)『国民の歴史』の発刊とバラまき。『国民の油断』(文庫版)も教育委員へのバラまき。--謀略的な違法行為の展開で「国民が支持している」という世論づくり。

(4)全国各地で取組まれている採択活動。--採択からの恭氏の排除をねらい、議員と連携した地方議会や教育委員会への執拗な請願・陳情活動。教科書改善対策室の設置。

(5)『国民の歴史』などを使った「歴史学習運動」の全面展開。

(6)「つくる会」は教科書つくりに関係していないという詭弁で違法行為を重ねる。

(7)「つくる会」教科書は4月3日一部修正で検定に合格し、採択が最大の焦点に。

4.改憲団体・日本会議や自民党などによる策動

(1)日本会議は都道府県本部を設立。

(2)「つくる会」「日本会議」の連携による右派・歴史修正運動の草の根展開。両組織が共同して結成した「教育組織」は、「産経」とも連携して、教育・学校・教科書を攻撃している。

(3)右派の「統一戦線」組織=教科書改善連絡協議会(「改善協」)。各地に支部結成。

(4)教科書議員連盟の結成と地方議会での教科書攻撃と採択制度改悪の意見書(請願)採択運動。自民党政調会(麻生太郎会長)が市民の「つくる会」教科書批判を「不当な政治介入」と断定し、自民党都道府県連に市民運動の監視を指示する通達を出す。

5.広がる否定的影響

(1)一部の教科書会社で「自主規制」の動き--既存7社の歴史教科書はどう変わったか。

(2)「自主規制」を迫る強力な圧力。教科書既述の後退は教科書会社の自由意思ではない。

6.「つくる会」などの地方議会・教育委員会への請願・陳情の問題点

(1)地方議会・教育委員会への請願・陳情の状況と教育委員会の迎合

(2)「つくる会」の政治的圧力による採択活動,請願内容のどこが問題か。

7.子どもたちが狙われている=「戦争のできる国」づくりに向けて

(1)多国籍企業の世界第1位の対外資産・権益を守るために、いつでも自衛隊は兵が可能な国家(普通の国=小沢一郎)をめざす。

(2)自衛隊を「張り子の虎」から「戦争のできる軍隊」へ。その為の国民(特に、子ども・青年)の歴史認識・戦争認識を変え、国家に対する誇り(国家意識)を持たせる。奉し活動の義務化。徴兵制への布石(『徴兵制が日本を救う』)。

8.広がる反撃を私たちの運動の課題

(1)21世紀に不可欠な共生の前提は歴史認識の共有。

(2)「危ない教科書」を学校・子どもたちに手和さない運動の広がり。

(3)「子どもと教科書全国ネット21」の運動と「地域ネット」づくり。

9.「つくる会」教科書の採択状況

(1)542の公立中学採択地区、国立中学校はゼロ

(2)東京都教育委員会が都立擁護学校の一部(2校2文教室)、愛媛県教育委員会が県立擁護学校(3校)・ろう学校(2校)に採択。

(3)私立中学校--歴史と公民の両方:国学院栃木(栃木県)、常総学院(茨城県)、麗澤瑞穂(岐阜県)、津田学園、皇學館(三重県)、甲子園学院(兵庫県)。歴史のみ:理科付属(岡山県)、文徳(熊本県)。公民のみ:清風学園(大阪府)、正光学園(徳島県)。ただし、常総学院と文徳は正規の教科書ではなく副読本なので採択=需要数には計上されない。(※公民の需要数は848冊)

2002年度中学校歴史教科書の生徒用需要数

発行者名2002
年度需要数
同年度
占有率
2001
年度需要数
同年度
占有率
東京書籍676,434冊51.2%556,443冊40.4%
大阪書籍185,372冊14.0%258,939%18.8%
教育出版171,215冊13.0%247,920冊18.0%
帝国書院144,215冊10.9%26,169冊1.9%
日本書籍77,718冊5.9%188,695冊13.7%
清水書院33,346冊2.5%53,716冊3.9%
日本文教出版30,968冊2.3%45,452冊3.3%
扶桑社521冊0.039%--
合計1,320,107冊100%1,377,334冊100%
10.「つくる会」教科書を子どもに渡さない活動

(1)学習会・講演会・シンポジウムなどの教科書集会…半年で1000箇所

(2)全国各地に教科書問題の市民組織…全国に200を超える教科書の市民組織

(3)署名,街頭宣伝(ビラ配布など)

(4)教育委員会などへの請願・要請と署名活動

(5)10円パンフレット「これが危ない教科書だ!」25万部の活用

(6)新聞意見広告…東京での取組みに3150名超,260団体超が賛同、カンパ1,270万円、(「朝日新聞」6月21日、「教育新聞」7月2日、「読売新聞」7月3日、「毎日新聞」7月4日、「東洋経済日報」7月14日、韓国「東亜日報」7月13日、韓国「朝鮮日報」8月15日、韓国から強い反応、国内からも激励・賛同、抗議、いやがらせ。静岡・大分でも取組み。「つくる会」側も意見広告(「読売」7月12日)。

(7)批判本の出版…8冊以上、雑誌の特集,新聞・テレビ報道

(8)「つくる会」の活動を規制する取組み、公正取引委員会への独占禁止法違反での申請(告発)

11.超党派議員の会の結成と政治的介入と文部科学省通知

(1)「つくる会」教科書の採択をバックアップし、市民運動を敵視する超党派議員の会の不当な政治的介入

(2)超党派議員の会などの圧力に迎合し、「つくる会」教科書採択に加担する文部科学省

12.国際的な批判とアジアの市民運動と連帯した活動

(1)韓国・中国からの再修正要求と政府・文科省の事実場の拒否回答

(2)韓国・中国からの再修正要求は内政干渉ではない

(3)欧米の学者・研究者の批判アピール

(4)日本の歴史歪曲教科書を許さないアジア緊急連帯会議

13.今回の教科書運動の特徴,80年代との大きな違いについて
(1)市民運動主体の活動

(2)全国と地域がネットワークで結ばれて活動

(3)アジアの民衆・市民運動と連帯した活動

14.歴史を歪曲する教科書問題は終わっていない--「つくる会」の方針

(1)「4年後にリベンジ」「今度は大勝する」

(2)小学校国語・社会の教科書も発行…小学校検定は2003年、採択は2004年

(3)採択制度をさらに改悪し、教科書法の制定をめざる

(4)歴史歪曲の高校教科書『最新日本史』が2001年2月検定申請、明成社発行

(5)役員体制を一部手直し、西尾幹二は名誉会長、新会長は田中英道

15.これからの課題について

(1)全国各地の市民組織のネットワーク

(2)「つくる会」教科書が採択された擁護学校・私立学校についての取組み

(3)既存教科書会社への内容改善の取り組み

(4)歴史教育アジアネットワークの結成と共通歴史副読本づくり

(5)東アジアレベルでの教科書国際シンポジウムの企画・開催

(6)日韓民間交流再開についての提案と韓国政府・政界の反応

(7)採択制度改善や教科書検定制度改善の取り組み

(8)「子どもと教科書全国ネット21」の会員拡大と「地域ネット」づくり

参考図書
『教科書攻撃のウソを斬る』(「教科書ネット」編・青木書店)
『教科書攻撃の深層』(学習の友社)
『教科書攻撃を慰安婦問題』(高文研)
『ここまでひどい!「つくる会」歴史・公民教科書』(明石書店)
『「つくる会」教科書はこう読む』(明石書店)
『月刊マスコミ市民』(俵が教科書問題を連載中)
『徹底検証・あぶない教科書』(学習の友社)
『これがあぶない教科書だ』(「子どもと教科書全国ネット21」)
『こんな教科書 こどもにわたせますか』(「子どもと教科書全国ネット21」編・大月書店)
『歴史教科書 何が問題か--徹底検証Q&A』(岩波書店)
『教科書レポート』(出版労連)
新刊『テーマ別検証 歴史教科書大論争』(新人物往来社)
『世界』別冊・歴史教科書問題--未来への回答 (岩波書店)

 


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