2001年 10月5日 金曜日

内緒話


 選挙区で支持者から初めて「大臣!」と呼ばれたときもうれしかったが、天皇から「大臣!」と呼ばれたときのあの感激はわすれられない。

 「大臣」とは「臣下のトップ」の謂いであるが、誰の「臣下」かと言えば無論天皇の臣下である。なにしろ、いにしえは「左大臣」「右大臣」、あるときは、プラス「太政大臣」とほんの二、三人しか大臣にはなれなかった。天皇の側近中の側近である。だから、天皇から「大臣!」と呼ばれると、大臣は、主権在民などポーンと忘れて「ははああ」とおそれかしこまるのである。

 大臣になると「内奏」という天皇の臣下としての最大の任務がある。「内奏」は、「内密に奏聞する」、つまり内密に天皇に申し上げることである。だから内奏話は、下々でいうところの内緒話のようなものである。

 天皇が秘密を守ってくれるので、大臣は内奏においては何をしゃべってもかまわないのである。当然、本当は牛肉は召し上がらないほうがよろしいかと存じます、と秘密情報を流したり、気に食わぬ同僚大臣の悪口も言上したりすることができる。これまでもたくさんの大臣がけっこう変なことを天皇に奏上してきたのであるが、とりあえずわれわれ下々は蚊帳の外であった(入りたい蚊帳ではなさそうだが…)。

 天皇が秘密を守っている限り内奏の内容は漏れないはずだったのに、最近「内奏」で天皇と親しく言葉を交わした外務大臣が有頂天になってしまい、自分で側近に「内奏」の内容をしゃべってしまったらしい。そしてその側近が、善意でか悪意でかわからないが、それをマスコミにばらした。

 外務大臣が天皇に言上したことが「総理大臣の指揮の問題点」という誰でも知っていることだからよかったものの、「総理大臣が独身なのは問題でございます。ぜひ陛下におかせられてもアトガマのご手配に関しましてご高配を賜りますよう伏してお願い申し上げます」などと内奏したとすると、首相も困っただろう。


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