2001年 6月5日 火曜日

 厚生労働省の「女性非難」


   昨日付けの「愛媛新聞」のトップ記事の見出しは

 
 

喫煙女性 妊娠しても4割が継続 胎児に悪影響承知 

 

というものであった。
 厚生労働省研究班の最近の調査結果の報道である(厚生省の研究班という組織は安部英元帝京大学副学長が責任者をしていたAIDS研究班の存在で広く知られるようになった)。

 妊娠中に喫煙すると、しない人に比べて早産や流産が1.5倍にもなるのに、妊婦たちは悪影響を知っていて喫煙を続けている。これでは「少子化」を助長するばかりだ。なんという無自覚な女性たちだ。……というメッセージである。

 ここでは、「非難は逆効果」とする識者の見解が紹介されているように、女性の喫煙が非難の対象して扱われているのである。

 こんな事を思う。

  1. 今回の調査の対象は、4医療機関の妊婦1473人である。その結果は、
    • 妊娠前にタバコを吸っていなかった妊婦が全体の78.4%
    • 妊娠前にタバコを吸っていたが、妊娠中に喫煙を止めた妊婦が全体の13.2%
    • 妊娠前も妊娠中も喫煙している妊婦が8.4%

    である。全体としては合理的な行動が選択されており、それ程問題があるとも思えない。

  2. 厚生労働省研究班はこのわずか8.4%の妊婦を「喫煙女性の4割が妊娠しても喫煙継続」と問題化し、「本年度中に全国を網羅しサンプル数を大幅に殖やした本格的な調査に乗り出す方針」だそうだ。はたしてそんな必要があるのか、なにか納得がいかない。

  3. それにしても、女性の喫煙が20%強まで高まったことには一つの人為があったと思う。つまりそこには、成人男性の喫煙率の低下のなかで「かるいタバコ」を謳って青少年と女性のなかに愛煙家を掘り起こしてきたたばこ専売公社とJTの系統的な経営戦略であった。この経営戦略を放置して問題を論ずるのでは解決にはなるまい。

  4. こう見てくると、「妊婦の喫煙習慣」の問題は、もう一方で、今国民の健康を考える上で深刻な問題の一つとなっている中学生・高校生の喫煙習慣の爆発的広がりと根を同じくしていることを注目したい。斬り込むなら当然ここにも斬り込むべきであろうにそこには目が向いていない。

  5. 流産や早産はこどもを生もうとしているものにとっては本当にかなしいことである。もし、タバコが流産や早産の原因となるとしたら、タバコをひかえなければならないのは妊婦だけではない。妊婦のまわりで妊婦にパッシブ・スモーキング(受動喫煙)を強制する喫煙者も「同罪」である。

  6. 実際、今回の厚生労働省研究班の発表でも「60%以上の妊婦が夫や家族から受動喫煙の被害にあっていることが判明した」などとしているのだが、喫煙習慣をもつ妊婦が8.4%で、受動喫煙が60%ならまず問題にすべきは60%の受動喫煙の方ではないのか。

  7. にもかかわらず、今回の厚生労働省研究班の発表は妊婦の喫煙習慣に力点をおいて発表している。ここに満州事変以来厚生労働省(厚生省は1938年設置)が女性の身体のコントロールに異常なほどの関心(「産めよ殖やせよ」、堕胎、優生手術…)を持ってきた歴史をつい思い出してしまって気持ちが悪くなるのである。 
    ※未成年者喫煙禁止法が施行されたのは1900(明治33)年、健康な兵隊作りがねらいだった。また、日本に煙草専売局が作られたのは1904年(明治37)年、これは日露戦争の戦費調達の必要が設置理由の一つだった。どうも煙草と戦争は因縁があるらしい。