2001年 5月29日 火曜日

 音色と包帯 ?


  ピアニストの岡崎ゆみさんが日本経済新聞紙上のコラムで「出産後、レパートリー増える」という文章を書いている。子どもがいるので海外へ出かけられないのはつらいが…、と述べた後で

 
 

逆に音楽家として子育てから得たものも大きい。子どもを産んで音色が確実に増えた。かつては出せなかった柔らかい音を奏でられるようになった。……音色が増えた結果、レパートリーが広がり、ピアノソロの子守歌のような曲も表現力豊かに弾けるようになった。 

 

と書いて、息子さん(3歳)に感謝の言葉を献じておられた。

 この記事を同僚に見せると、看護婦もおなじだそうだ、と教えてくれた。彼の奥さんは看護婦をやっておられるのだが、奥さんがこんなことを言っておられたという。

 
 

独身の看護婦と赤ちゃんを育てた看護婦では包帯の結び方が違う。独身の看護婦が包帯を巻くと強すぎたりゆるすぎたりするが、赤ちゃんを育てた看護婦は、赤ちゃんに巻くようにちょうどよい感じにまけるようになる。 

 

 いずれも、心と身体との親密な関係を物語っている点で興味深い話である。

 心と身体の親密さの話は私の好きなジャンルなのであるが、しかし、うーむ、でも考えてみると、これじゃあ、子どもを産んだことのないピアニストの音色にはつねにやや貧しさが伴うことになるし、同じく子どもを産んだことのない看護婦の包帯法には問題があることになるかな。独身者を「他者化」した上での話(独身者がいない所で成り立つ話)であるだけに一般化はできないのであろう。たしかナイチンゲールも子どもはつくってなかったのじゃなかったかな。

 実際、子どもを何人も育てた教師が生徒の気持ちが理解できているかということになると、私の知る限りそんな相関関係はまったく成り立たないのである。