2001年 5月27日 日曜日

学習ノート
 ハンセン病差別の系譜(2) 優生学

『優性操作の悪夢』(天笠啓祐著 社会評論社1996)の復習


   ここでは「生物学的社会運動」の一つ、「優生学」を取り上げる。

産業革命の進行
19世紀、ロンドンの状況
  1. 大規模なスモッグの波状攻撃
  2. 常に煤煙の空
  3. フリート川、テムズ川の深刻な汚染。汚物が流れ込み、異臭が漂いつづける。
  4. そのテムズ川の水をロンドン市民は飲料水に利用しており、水は伝染病の発生源にもなった。1989、1853、1854年にはコレラの大流行で死者2万人。
  5. 農村から人々が流れ込みスラムを形成、スラムを中心に人口爆発が起きていった。
このような社会に危機意識を抱いたフランシス・ゴールトンは、ダーウィンの進化論を人間に適用しようとした。

 貧困層の増大、環境の悪化、病気の蔓延という社会的危機を、人間の劣化の危機、つまり「遺伝的危機」ととらえ、 「社会を改善していくためには『優れた人間』を増やさなければならない」として「優生学」を提唱する。

優生学(eugenics)とは?
人類遺伝学の知識と高度の医療技術を応用して遺伝に基づく劣悪な心身の素質をもつ人口の増加を防止するとともに、健全な素質の増加を積極的に図り、人類集団の遺伝形質を改善することを目的とする学問をいう。 …『日本大百科全書』(1998年7月1日改訂第2版)より…
優生学を唱える人は、まず人間を2種類に分別する。「健全な心身の素質」の持ち主と「劣悪な心身の素質」の持ち主と、に。ハンセン病患者・元患者、アルコール中毒者、同性愛者、犯罪者等々は「劣悪な心身の素質」を持つ者である。そして、これらの人々の「人口の増加を防止」しようとするのである。。
 参考までに日本の現行「優生保護法」の第1章総則を挙げておく。発想はゴールトンと変わっていないことがわかる。
第1章 総則
(この法律の目的)
第1条 この法律は、優性上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保持することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律で優性手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもって定めるものをいう。
2 この法律で人口妊娠中絶とは、胎児が、母体外において生命を保持することが出来ない時期に、人工的に、胎児およびその附属物を母体外に排出することを言う。