2001年 5月10日 木曜日

 【転載】
   『えひめ丸』事故に関する
   愛高教の緊急申入れ


   3月21日、愛媛県高等学校教員組合(愛高教)が愛高教宇和島支部と連名で『えひめ丸』事故対策本部長・愛媛県知事に提出した「緊急申入書」を転載します。

 

 事故の原因と責任に関しては、米軍がその責めを負うべきことは明らかでありますが、『えひめ丸』事故に関しては、現場教職員が県教育委員会に対して指摘し続けてきたもう一つの重要な原因が潜んでいます。

 ところが、現在の対策本部もまた、その原因を認めず、現場教職員の声に耳を傾けない対応に終始していると思わざるを得ません。

 そこで私たちは、労働組合として、生徒の生命と安全を第一義とする教職員の考えを表明することにしました。

 下記の事項について、教育委員会に対応を求めると同じに、対策本部としてしかるべき対応をするよう緊急に申し入れるものです。

1 事故に至った県および県教育行政の責任を明らかにすること。
 とりわけ、実習収入全面依存の教育予算の在り方が、漁獲第一主義の運営を生み、事故の遠因となったことを認め、改めること。

 本県職業学科のうち水産高校や農業高校などの教育予算は、学校から実習収入として県に上納される金額とほぼ同額とされてきた。そのため、学校では農水産の収穫第一主義の運営を余儀なくされ、本来の実習教育が圧迫されつづけてきた。

 宇和島水産高校の『えひめ丸』事故の直接的な原因は米原潜による衝突であるが、この教育予算の在り方は、以下に述べるように事故の重要な原因となっている。

 県および県の教育行政は事故の原因について主体的な責任があることを認め、被災者・家族・学校関係者に謝罪したうえ、実習収入全面依存の教育行政を改めるべきである。

 この責任をあいまいにしたままでは被災者・家族への支援に重要な不備が生じると共に、痛恨の事件から教訓を引き出すこともできない。

2 実習収入全面依存が実習船の構造、運航、運営を限定してしまったいきさつを分析して、改めること。
(1)平成8年に現在の第四代『えひめ丸』が建造される際も、実習生の生命と安全よりも漁獲・利益を優先する構造の船を建造せざるを得なかった。
 これが、今回多くの行方不明者を生み出した重要な要因といわざるを得ない。
@マグロ漁獲第一主義のため舷門(げんもん)(漁獲物とり入れ口)が波にさらわれやすい海面に近い構造になった。

Aそれに付随して、生徒食堂が喫水線(きっすいせん)(海面)よりしたの船体下部に配置され、脱出しにくいものとなった。操練(避難訓練)のとき、生徒の最後尾につく指導教官はいつも時間内では退避できず、心配していた。そして、今回、その心配通りの結果を招いた。

(2)漁獲第一主義が乗組員の不安定雇用を生んできた。
実習船としての構造、運航、運営ではなく「漁船」としての機能をもたされる結果、実習教育を担当する教職員としての雇用がなされず、乗組員の不安定雇用が続けられてきた。

 そして、74日もの長期乗船で、マグロの多く採れる海域まで年に3回も「出漁」しなければならないことが、事故の遠因になった。

(3)漁獲第一主義のため、定係港を、大量のマグロの販売ルートのつかめる神奈川県三崎港にせざるを得なかった。それがまた、地元宇和島に専用岸壁を作る意欲を生み出さなかった。

3 新しく造る実習船は「漁船」ではなく、真に「実習船」となるよう、建造過程でも現場教職員の意見を汲み尽くして、快適で魅力ある、安全な実習船を建造すること。
(1)現場教職員は
「二層甲板船にして居住区にゆとりを持たせること」
「600総トン数級の実習船とすること」
など、強い願いを持っている。新しい実習船の建造は、生命と安全が守られ、教育主体の実習ができるものとなるよう、現場教職員の意見を汲み尽くす形で進められるべきである。

 すでに現在の時点で代船の設計費用などが取り沙汰されているが、現場教職員に一切相談がないまま県庁あたりでことが決定されているのは許しがたいことである。

(2)第四代『えひめ丸』は、新造船の時からトイレの排水が逆流したり、空調設備が壊れたりして、修繕に何年もかかってきた。

 苦痛の多い「漁船」としての乗船実習をした生徒が専攻科に残らない事態も生んできた。

 設計および建造過程で教職員の意見を聞かなかったことが教育主体の実習船から遠ざけた原因であることを認め、現場教職員の意見を汲み尽くす進め方に改めるべきである。 

4 事故対策本部は原潜にのみ責任をとらせればすむという立場ではなく、もっと立ち入って原因を解明し、県もまた、生命と安全の責任者であることを認め、これにもとづく対応をすること。
(1)実習収入全面依存の教育予算の在り方を含め、事故の原因を主体的にも総点検して、生命と安全に責任の持てる乗船実習ににとって何が問題であったかを全面的に明らかにすること。

(2)被災者と家族や、学校関係者がどのような援助が必要なのかを、随時聞いて回り、対策本部と連絡をとって活動を進める専門・常駐の担当者を最低2名現地に配置すること。

(3)被災者・家族にたいする支援も、緊急事態としての超法規的支援がどこまで可能なのかをさぐる立場で対応すること。

(4)大西船長の心身のケアに特段の配慮をすること。

5 松岡高校教育課長に責任を自覚させ、誠実な対応が出来ない場合は更迭すること。
(1)命と安全の責任者なのに、上記1、2、3のいきさつで実習させ、事故に遭わせたことを被災者と家族、宇和島水産高校にも謝罪していないのは、驚くべきことである。

(2)高校教育課長は直接の責任者として現地へ出かけて、親身な対応になっているかどうかを検討すること。
松山にいて現場を振り回すような態度を改めること。

(3)現場の声を聞き、乗船実習の在り方を抜本的に見直すこと。

(4)上記が出来ないなら、現在の高校教育課長を更迭すること。

6 宇和島水産高校の堀田校長に責任者として、次の事項を自覚させること。
(1)学校長は被害者的側面だけが強調されて報道されているが、命と安全の責任者であることを自覚して、被災者および家族に謝罪しなければならない立場でもある。その自覚を促すこと。

(2)現場教職員の意見要望等に謙虚に耳を傾け、これを尊重し、また、学校運営及び乗船実習の在り方を抜本的に見直すよう、その自覚を促すこと。

以上