2001年 3月23日 金曜日

 修学旅行での事故と学校の責任


 宇和島水産高校の海難事故の直接責任は米軍にある。これは疑いようがないと思う。 しかし、では学校や愛媛県は責任がないのかというと、ないとは言いきれない。

 この問題を考えるとき、1988年の高知学芸高校の中国修学旅行での列車事故が参考となろう。あの事故の直接責任は当然中国にあったわけだが、遺族は学校側の責任を指摘して損害賠償を求めた。資料として当時の読売新聞の記事を転載しておく。

 

◆遺族の請求棄却 下見に不備指摘◆

 昭和六十三年三月、中国を修学旅行中の私立高知学芸高校(高知市)一年生二十七人と教諭一人の計二十八人が死亡した上海列車事故で、三遺族が「子供たちの死は学校側が下見や安全確認を怠ったことなどが原因」として、同校と佐野正太郎校長(74)を相手取り、総額約一億三千六百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十七日、高知地裁であった。溝淵勝裁判長は、下見が不十分であることや、学校側が必要とされる努力をしたかは疑問と厳しく指摘したうえで、「列車事故の予見性はなく、学校の法的責任までは問えない」と原告の訴えを棄却した。海外修学旅行中の事故で学校側の安全管理責任が問われた初のケースとなったが、判決は事故と直接的な因果関係はないとして退けた。(2面に判決要旨と解説、13面に関連記事)

 判決の中で溝淵裁判長は「学校は海外修学旅行の企画、実施に際し、自らその安全性を調査、確認する義務がある」としたものの、利用交通機関の安全性はその相当部分を旅行業者の調査、判断に依存せざるを得ない。しかし、学校として事前調査を尽くしたとは到底いえない」とした。

 その上で「しかし、事故原因は運転士の信号見落としで、これを事前に予見できた可能性はない」と請求棄却の理由を述べた。

 ただ、学校側の対応については「問題点を検討、改善するとともに、生徒、遺族に十分な誠意をもって対応すべきであったのに、遺族の心情を十分に顧みることがなかった」と厳しく批判した。

 訴えていたのは高知市栄田町、会社役員中田広海さん(52)ら三遺族六人。

 平成元年二月、中田さんら六遺族が▽創立三十周年記念として初の海外修学旅行を計画した学校側には、生徒の安全を守るため、利用する中国の交通機関の安全性などを事前調査する義務があるのに、基本的な調査をしなかった▽事故の際、引率教諭らは生徒の救出活動をせず、安否の確認も怠った――などとし、生徒一人約四千二百万円から四千七百万円の損害賠償を求めて提訴した。

 三十回にわたる口頭弁論で、原告は▽佐野校長の下見は、妻同伴の観光旅行に過ぎず、引率教諭との打ち合わせもしていない▽旅行直前に中国で列車事故が続発し、多数の犠牲者が出たことを知りながら、学校は父母に説明しなかった――などと主張。「事前に中国の交通事情などの説明があれば、わが子を中国に行かせなかった」と訴えた。

 これに対し、学校側は事故は運転士の信号無視が原因であるとして「たとえ全行程を下見しても、学校や教員が交通機関の危険性を予見することはできない」「学校としては社会的に信頼できる旅行業者に調査を依頼すれば十分」「教師たちは現場に戻って救出活動をしようとしたが、軍隊に止められた」などと反論していた。

◆「全面解決へ努力」◆

 高知学芸高校は「本日の判決を厳粛に受け止め、その内容を検討して、全面解決のため、誠意をもって努力致したいと存じます」とのコメントを発表した。

             ◇

 〈上海列車事故〉 昭和六十三年三月二十四日、高知学芸高校生と引率教員ら百九十三人の乗った南京発杭州行き急行列車(十六両)が上海市近郊で杭州発の列車と正面衝突。生徒二十七人と教諭一人が死亡、三十八人が重軽傷を負った。上海鉄道局は運転士の信号無視と断定。遺族への補償としては中国側の賠償金四百五十万円だけで、他は旅行会社の保険金など。