2001年 2月9日 金曜日

 学習ノート
生徒の集団虐待と学校の責任 5
学校の注意義務


  采女 博文さんの 『いじめと人権--いじめ裁判例を読む』 【1995年度鹿児島大学公開講座 リカレント法律学−人権− 】(法学科主催) の学習ノートの続きです。全文はここの『イジメ根絶のページ』の上記論文を見てください。

 いじめ被害あるいはいじめを苦にした自殺に関して、学校に責任があるかどうかは、学校に課せられている「注意義務」が履行されているかどうかという問題になるようです。今回は、学校の「注意義務」どのようなものかを、判例から学びます。判例ではこの「注意義務」は「安全保持(配慮)義務」ないし「安全確保義務」と表現されています。


 判決Dはいじめ事件における学校の安全保持(配慮)義務を次のように説明している。

(1)既に一定の事実が把握されており、その事実だけからしても重大かつ深刻ないじめが推察されるという時のほか、
(2)生徒やその家族からの具体的な事実の申告に基づく真剣な訴えがあったときには、
(3)いじめの特質に思いを致して決してこれを軽視することなく、適切な対処をしなければならない。

 この判決は学校がなすべきことを次のようにも述べている。

(1)学校生活においておよそ生徒間の衝突が起こらないように、学校側が常時管理監督するというようなことは相当でなく、実際上も不可能である。
(2)しかし、生徒たちはなお未熟な子ども達であり、集団心理が働くなどして途方もない無責任で危険な行動に走ることもないとはいえないので、
(3)「学校側としては、この点についての警戒心をもって生徒達の動向に関心を払い、
(4)もしもある生徒(達)の行動により他の生徒の生命は勿論、身体、精神、財産等に重大な危害が及ぶことが現実に予想されるというようなときには、
(5)これを放任することなく、直ちに事態に応じた適切な措置を講じて、結果の発生を未然に防止すべく努力しなければならない」。


 判決Eは、安全保持義務違反行為について次のように述べている。

(1)諸般の具体的状況に照らして、
(2)そのまま放置したのでは生命若しくは身体への重要な危険又は社会通念上許容できないような深刻な精神的・肉体的苦痛を招来することが具体的に予見されるにもかかわらず、  
(3)故意又は過失によって、これを阻止することのできた実効的な方策をとらなかったとき、  
(4)初めて安全保持義務違反の責めを負う


判決Gは、安全確保義務をつぎのように規定している。

(1)「公立中学校の教員には学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係における生徒の安全の確保に配慮すべき義務があり、
(2)特に、他の生徒の行為により生徒の生命、身体、精神、財産等に大きな悪影響ないし危害が及ぶおそれが現にあるようなときには、
(3)そのような悪影響ないし危害の発生を未然に防止するため、その事態に応じた適切な措置を講ずる義務がある」。