2001年1月15日 月曜日

 横浜地裁判決に学ぶ


   今日横浜地方裁判所が、中学生の自殺事件に関する判決を下した。事件の経過と地裁の判断をまとめる。

  1. 1994年当時、いじめ自殺の報道が続いていた。

  2. H君は1994年4月、相模原市の中学校から津久井町立中野中学校に転向してきた。

  3. 4月5日 始業式の後、「髪の毛がながいじゃん」「(自分たちの)名前を覚えておけ」といいながら、A君の顔や身体をたたいた。

  4. 4月 ほかのクラスの女子生徒に書かせた「ラブレター」をA君が破り捨てると,張り合わせて皆で読んだり、はやしたてたりしたうえ、机やいすを廊下に出し、教科書を窓から投げ捨てた。

  5. 5月 歩いているA君に対し、足を突き出して転ばせるような「足掛け」を繰り返した。

  6. 5、6月ごろ A君への暴行を繰り返すようになったほか、「じゃんけんゲーム」と称してA君のほおを強くつねり、「ベランダあそび」と称してベランダの隅に追い詰めて殴るける。

  7. 7月13日 A君のテストの点数を見ようとして断られたため,教科書などをごみ箱に捨てた。

  8. H君の担任教諭はH君へのいじめ行為を少なくとも15回把握していた。

  9. H君の担任教諭は両方を諭して握手させたことで決着したと考えていた。

  10. H君へのいじめ行為は担任教諭から校長へ報告されていなかった。

  11. 7月14日 放課後、A君のカバンを持ち去った。その後、博君の机にチョークの粉をまき、給食用のマーガリンを机と教科書に塗りたくった上、花瓶の水を机にかけた。いすにもチョークの粉をかけ,画鋲を置く。

  12. 7月15日 机の様子を見てがっくりするA君の様子を見ていた。

  13. この日、H君は帰宅後、自宅で首をつり自殺した。集団虐待が始まって3ヶ月後であった。

  14. H君の遺書はなかった。

  15. H君の両親が、H君の自殺の原因は学校でのいじめであるとして、当時の同級生10人と神奈川県、津久井町に計約8000万円の損害賠償を求める訴訟をおこした。

  16.  元同級生らは裁判で行為の大半は見とめたが「けんかなどの延長で、いじめという認識はなかった」と反論した。 

 裁判所の判断は次の通りである。

  1. この自殺はいじめが原因である。

  2. 学校はH君について自殺のような重大な結果が起きることを予見できた。

  3. 学校側に対しては、「トラブルは個別的・偶発的なものであり、双方に謝罪させたり握手させたりすることで十分な指導をした」と思い込み,強く指導をしなかったと認定し、学校はいじめ防止を指導、監督する義務を怠ったとした。

  4. 同級生10人のうち9人(10人のうち男性1人を除く)、と神奈川県、津久井町に計200万円支払うこと、またこれとは別に神奈川県と津久井町に計約3950万円の賠償を命令した。

 この判決から私たちは、生徒の集団虐待行為における責任の所在、生徒の自殺と集団虐待の因果関係とその責任の所在について基本的な見方を学ぶことが出来る。以下、一般論として述べてみたい。

学校における集団虐待行為への対応について

  1.  学校は、同級生たちのいじめ(集団虐待)行為によって与えられた被害者生徒の苦しみを、加害者生徒、および適切な指導の出来なかった担当教員、並びに一般教員に深く理解させ、それぞれに真剣な反省と再発防止を求める義務がある。

  2.  ただし、教員の不適切な対応が、個別的・偶発的なものではなく、学校の集団虐待行為防止対策の不備から生じたと考えられる場合は、生徒の被った被害の最終的な責任は加害生徒と学校にあることになる。

  3.  これらの認識を前提として、被害者生徒に加えられた集団虐待の実態を徹底的に明らかにしなければならない。保護者が損害賠償訴訟を起こした場合は裁判所がこの仕事の中心となるが、訴訟がない場合はそれは学校の責務となる。

実在が確認されたいじめ(集団虐待)行為と、同時に起きた自殺事件との関連について

  1.  生徒の自殺の原因が同級生たちのいじめ行為である疑いが残されているかぎり、学校はこの自殺事件の原因をあきらかにするために最大限の努力が払われなければならない。

  2.  ほか(たとえば家族内や友人関係での軋轢など)に自殺の原因に相当するものが見出せない場合は、ほかの事象(例えば自殺決行の日時など)も考慮して、学校独自の判断として、いじめ行為を生徒の自殺の原因と認識せざるをえない。

  3.  その場合、学校のいじめ(集団虐待)行為防止の取り組みが十分なされていたと認められる場合は、特定の生徒が学校の指導の限界を越えてなした個別的・偶発的ないじめ行為による自殺とみなすことができ、学校に直接の責任はないと考えられる。

  4.  自殺事件が、学校にいじめ防止のための特段の取り組みのない状況で発生したと認められる場合は、学校に重大な責任が生じることになり、学校はなんらかの形でその責任を取らなければならない。